■ 「第3回コミュニティファーマシーフォーラム」開催報告

 発信!発進! コミュニティファーマシー 

 7月24 日(日)東京・秋葉原にて「第3回コミュニティファーマシーフォーラム」開催。テーマは「発信!発進!コミュニティファーマシー」。会場には、200名を超える、薬局経営者、薬剤師をはじめとする薬局関係者の他、薬学生、医薬品や食品メーカー、医療関連及び一般紙の新聞社、出版社など多岐にわたる分野の方々が、全国、海外はドイツから集いました。

 主催者挨拶(JACP代表理事・吉岡ゆうこ)として、当フォーラムを振り返り、そして回を重ねるごとに活気を増していることへの謝意が示され、薬局を取り巻く環境が激変しているなか、以下に記す特別講演、3つの基調講演、薬学生が行うくすり教育劇、およびJACP会員薬局、会員による口演、ポスター発表について紹介があり、これらを踏まえて今回のテーマは、「発信!発進!コミュニティファーマシー」との趣旨説明がありました。

 特別講演「2035年に向けて薬局の進む道」について、座長の浜田康次先生(日本医科大学千葉北総病院薬剤部)から前厚生労働省の田宮憲一氏1)のご紹介がありました。田宮氏は「医薬分業および薬局・薬剤師を巡る議論」、「患者のための薬局ビジョン」の策定等に触れ、既に4月から動き出した「かかりつけ薬剤師・薬局」、10月から届け出が開始される「健康サポート薬局の役割」について、中心になってまとめあげられた立場からその本質を言及されました。「健康サポート薬局は制度的な広がりを考えると、日常生活圏域に一つはないといけない」とし、2025年ごろまでに1万~1万5000軒を目指すべきと示唆。また、塩崎恭久厚生労働相に云わせると「かかりつけ薬剤師」は、「言ってみれば、白衣を着て街を、汗をふきながら走っていただくイメージ。地域住民にとって本当に医療の面で貢献していただく薬剤師や薬局にしていこうという話だ」と、先の記者会見での話の紹介もありました。

JACPが目指す方向性にもエールと喝采をいただいたとも思われました。

1)    田宮氏は2016年7月~ 公益財団法人先端医療振興財団クラスター推進センター総括監(神戸)に移られています。ますますのご活躍を期待申し上げます!

基調講演①として、「いきつけ薬局のかかりつけ薬剤師の羅針盤」という演題で吉岡ゆうこ代表から、これまでの外部環境変化に対応してJACPが取り組んできた経緯、2015年「いきつけ薬局のコンピテンシーモデル提唱」、2016年「第1回ワークショップの事例:結果にコミットする薬局」の紹介、2018年調剤報酬改定ビッグイヤーに向けての準備~今後は実績やアウトカムが問われる時代なる等、大変、刺激的な示唆に富む、力強いメッセージがありました。そして2035年に向けての薬局・薬剤師への羅針盤としては、『最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である。』 チャールズ・ダーウィンの名言を紹介。そして一緒に変化に立ち向かおう! 一緒に行動変容しよう! 一緒にのろしをあげよう!と締めくくられました。

2)    のろしをあげよう!とは、コミュニティーデザイナー山崎亮氏の2月11日、第1回ワークショップで話された「瀬戸内地方で行われている、のろしリレー」が発端となっています。

続いて、(社)日本記念日協会代表理事の加瀬清志氏から「5月5日は『コミュニティファーマシーの日』として記念日に登録されました」とお知らせがあり、吉岡ゆうこ代表に記念日登録証が手渡され盛り上がりました。また放送作家でもある加瀬氏から「日本の記念日」に関する面白い話題と「コミュニティファーマシーの日は、推古天皇が催した行事『薬狩』が5月5日だったことに由来しています。」との解説もくわえられました(本HPの5月2日インフォメーションもご参照ください)。

<休憩>の時間に入り、ランチョンセミナー共催(㈱大塚製薬工場)では、熱中症の季節、経口補水液に関して、服部益治先生(兵庫医科大学小児科教授)から、丁寧でわかりやすい解説がありました。脱水状態とは? 水分と塩分(電解質)を身体の外に失うことで、服部先生が作られた言葉でもある「脱塩水症」がより状態を適切にイメージできる内容で、それゆえ水分と塩分を素早く補給できる経口補水液(新OS-1をなど)をうまく使うことが熱中症予防・脱水対策に欠かせないとお話しされました。ランチョンセミナーにつづく「薬学生が行うくすり教育劇」、福島紀子先生(慶応義塾大学名誉教授)と慶応義塾大学薬学部学生4人による小中学生を対象にした薬教育の劇が壇上で披露され、喝采を浴びました。その内容は、くすりの吸収のメカニズムをわかり易く説明、あるいはくすりの依存症などの怖さを説明、表現したものでした。小中学生からも大変好評だったとのことでした。また、外にでて子供たちにくすりのことを伝えることは、学生自らのコミュニケーションのスキルを高める上でも貴重な経験でありました等の話もあり、楽しい、印象的な発表になりました。

 お弁当はベネッセの「おうちごはん」。五味五色五法による高齢者向け宅配弁当を試食しました。彩りよし、味美し、栄養よし・・・。しかしながら、今は一部の地域のみの販売です。今後は薬局がハブとなり、それらのお弁当の販売ができないか、地域とつながる示唆でもありました。その後、ポスター発表サイト・展示ブースの閲覧がはじまり、管理栄養士からのポスター発表も含むJACP会員・薬局からの12演題のポスターに対しての質疑応答・対応でにぎやかな時間が経過しました。まさに、それぞれ地域で発信している「のろし」の発表です。

 基調講演②「人と人をつなぐコミュニティデザイン」、第1回ワークショップ(アポビッテ2号参照)でもおなじみ、再登壇の山崎 亮 氏(studio-L 代表)のお話がはじまりました。ご承知の方も多いと思いますが、山崎氏は、人と人とのつながりによって地域住民自身の力によって課題を解決するコミュニティデザインを軸としたプロジェクトを全国各地で展開しておられます。そのお話しのスタイルには抄録なし、さながらNHK『鶴瓶の家族に乾杯』のようにぶっつけ本番で、それがサプライズと笑いを呼び、共感を呼び、参加意識を高めます。「楽しさなくして参加なし」と云われましたが、今回も笑いと楽しさあふれ、そして考えさせられる講演でした(内容は、ほとんどが即興と映像ですのでニュース文字にできず・・(笑))そして今回、会員ポスター発表では、厚川薬局(厚川俊明代表)の取り組みの発表「新たな地域構築~繋ぎ目となる薬局~」に対しコミュニティデザイナー山崎亮氏から当フォーラム初の「山崎亮CPアワード」が与えられました。

JACP会員口頭発表は3題あり、①富永由美氏(ネオプラスファーマ㈱虹薬局)「健康サポート薬局に向けての取り組み」、②小口淳美氏(㈱フォーラル)「薬局管理栄養士の地域活動」、③橋本寛子氏(㈱コスモ調剤薬局)「コミュニティファーマシストを目指して」、いずれも地域への発信や薬局での新しい取り組み(発進)の実践報告であり、とても参考になりました。

最後に、基調講演③として、おなじみドイツのロッテンブルグの街で薬局を経営するアッセンハイマー慶子氏の講演。「ドイツでも2004年に大きな医療改革、薬剤師は国民から激しいパッシング。その理由のひとつに、これまで制度に守られた薬局の甘えがありました(費用対効果の問題、服薬指導を十分に図っていない等、わが国も酷似?)。しかしABDA(ドイツ薬剤師連盟)の努力、広報、報酬改定、ビジョンの構築を経て、薬局・薬剤師の重要さを国民にアピールし、“いきつけ薬局”として再び信頼されるようになりました。」「ドイツの薬局が医療改革を乗り越えられた真の理由のひとつは、薬学はオールラウンドの学問、人の命を助ける・生活の質を向上させる学問ということで、だから人々が集う“いきつけ薬局”が存在します。」「薬剤師・薬局は、健康のみならず、衣・食・住、コミュニティデザインにコミットするようなパワー、可能性もあります。コミュニティのなかで最も身近な科学者でもあります。薬局や薬剤師が自分たちの専門的な機能・職能をもっとプラスに捉え、それを積極的に地域へアピールしていくといいでしょう。」(“いきつけ薬局”継続への道)と力強いエールとメッセージを再び投げかけられました。

このように、それぞれの演者、発表者から熱い思いが語られました。閉会後の情報交換会でもそれを引き継ぎ、大変に盛り上がりました。皆さまからどれも刺激になる話だったとの言葉を聞いています。そして熱い思いを持って地域に帰られたことと思います。

参加してくださった皆様、今回もフォーラムを盛り上げてくださり、本当に感謝しております。ありがとうございました!

第3回コミュニティファーマシーフォーラム宣言は、「発信!発進!コミュニティファーマシー 地域を巻き込み、地域に巻き込まれよう!」です。

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