老化が進みにくい身体を作るための研究 ~老化抑制によるレジリエント健康長寿社会の実現~

生物にとって「老化」は自然現象であり、誰も避けてとおることはできません。しかし、その進み具合や程度は人によって異なります。その違いに着目し、老化の速度を遅らせるための研究が最近進んでいます。この老化抑制が可能になれば健康寿命の延伸にも繋がり、医療や社会の負担を減らすことができます。
今年7月に、最長寿ネズミとして知られるハダカデバネズミにおいて、老化細胞の迅速な排除機能が熊本大学で発見され話題となりました。老化細胞とは、健康な細胞が何らかの原因で増殖を停止したもので、本来は異物として認識され免疫細胞により排除されます。ハダカデバネズミでは、年老いてもほとんど老化細胞が見当たらず、この排除作用が効果的に働いているようです。しかし、人では排除されずに残る老化細胞もあり、そこから分泌される物質により周辺の健康な細胞に慢性的な炎症や障害を与えてしまいます。東京大学医科学研究所の中西 真・教授を中心とした研究チームは、GLS1という酵素の阻害剤が老化細胞の除去に有力であることを老齢マウスで実証しました*。筋力の低下など老化に伴う様々な症状が緩和されたとのことです。さらに同研究チームは、がん細胞が免疫を回避する仕組みとして備え持つ免疫チェックポイントの機能が老化細胞にもあり、それを有する老化細胞は排除されずに残ることを発見し、免疫チェックポイント阻害剤も老化細胞の除去に使えることを実証し論文発表しています**
プロジェクトCHANGEでは、老化抑制によるレジリエント健康長寿社会の実現を目指して、中西教授を基調講演者としたシンポジウムを 12/11 に川崎市産業振興会館ホールで開催致します。是非、ご出席ください。 https://change.kawasaki-net.ne.jp/news/565/

*Science, 2021: https://doi.org/10.1126/science.abb5916
**Nature, 2022: https://doi.org/10.1038/s41586-022-05388-4

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