カーニバルシーズンと重なるカゼの流行
今年もカーニバル(この地方では、ファースネットと言います)のシーズンとなりました。私共の町、ロッテンブルクには言い伝えがあります:ここでは1年が四季ではなく、五季からなっていると。その5季にあたるのが、カーニバルシーズンです。この時期には、あちこちの市町村でカーニバルのメイン行事である仮装行列が行われます。カーニバルを行う自治体には、会員制のクラブがいくつかあって、それぞれ決まったカーニバル衣装を持っています。カーニバルを行うのは、古くはカトリックの市町村だけだったのですが、最近は、プロテスタントの市町村にもクラブができ、あちこちでカーニバルが行われるようになりました。
ある町で仮装行列が行われると、他の市町村のクラブ会員が衣装をつけて駆けつけ、町中をいっしょに練り歩きます。氷点下の気温が続くこの時期(日中の気温がマイナス十数度から三度くらいです)、ヘースと呼ばれるカーニバルクラブ会員たちは、衣装で汗をかき、寒さにふれてカゼをひきがちです。でも、つぎの週末には、元気に別の仮装行列に参加しなくてはなりません。この時期、飲食店はどこも夜遅くまで、入りきれないほどの人でごった返し、カゼをうつしたり、うつされたりしやすくなります。カーニバルシーズンはカゼのシーズンと重なり、カゼの患者さんがさらに増える傾向にあります。薬局ではカゼ薬の相談販売が大切な業務となります。
どの薬局でも規模の大小にかかわらず、医療用医薬品の他、処方箋なしで購入できる数多くのOTC医薬品を取り扱います。カゼの患者さんは、近くの薬局で気軽に健康相談ができます。のどや関節の痛み、咳、痰、鼻水、発熱など、症状によって、薬局のスタッフが適切なものを探し出します。選択肢もいろいろです。ハーブ製剤、ホメオパシー医薬品(ドイツでは薬局でしか購入できません)、合成成分配合のものなど。同じ症状でも、希望される製剤は患者さんによって違います。小児用製剤も数多く品揃えているので、小さな患者さんの症状緩和のお手伝いができます。医院での予約がすぐ取れない、もしくは、症状が軽いと思われる場合に、薬局で購入できる医薬品があるのは、お母さんにとって有り難いことです。
薬局で働くスタッフの多くは、それぞれの薬学教育の中で、総合感冒薬は、その適応症が患者さんの訴える症状とすべて合致する場合にのみ勧めること、と習ってきました。頭痛・発熱のみの患者さんに、せき・鼻水止め成分も含有されている総合感冒薬は、お渡ししてはいけないと。配合されている成分には、本来なら年齢や症状の度合いによって使用量や服用間隔に幅があり、1錠(カプセル)に入っている一定量では、適量を調整しにくいというのも理由の1つです。しかし、症状ごとにお薬を1品ずつ購入していては、患者さんの負担が大きくなります。そのような場合には、総合感冒薬をお勧めすることもあります。総合感冒薬に含有される解熱鎮痛剤としては、主にアセチルサリチル酸、イブプロフェンやアセトアミノフェン。鼻水対策には、プソイドエフェドリンや抗ヒスタミン剤が使用されています。総合感冒薬は、12歳未満の子供には使用できないものが多く、どなたがお使いになるかも尋ねます。アセチルサリチル酸配合のものを求められれば、抗血栓薬をお飲みの方が、家族にいらっしゃるかも伺います。どの成分がどのような症状緩和につながるか説明すれば、患者さんが納得してお薬を使えます。
ドイツでは、キシロメタゾリンのようなα交感神経作動薬が入った鼻水・鼻づまり止めの噴霧スプレーが良く使用されています。カゼでなくても、常用さらには依存的に使用されるケースもあり、スタッフの注意喚起が必要です。必要な時にできるだけ短期間使用することをお伝えすると同時に、鼻粘膜を保湿する目的の点鼻スプレーを併用するようお勧めします。等張の食塩水もしくは海塩水が入っています。デクスパンテノールやフレッシュ感があるユーカリ油やペパーミント油の配合されたものもあります。同じ症状でも、患者さんの受け取り方、希望する製品は様々です。ゆえに、薬局での相談販売は重要な役割を果たします。
ロッテンブルクは、人口約4万人の小さな市ですが、カーニバルのメインデー、日曜日に行われる大行進には、見物客が1万人近く訪れると言われています。早くカゼを治して、元気にカーニバルへ参加してもらいましょう。