春になれば虫刺されに注意
やっとドイツにも春が来ました。春らしくなる時期は、毎年大幅に違い、時々気温が急降下したり、5月半ばまでは雪が降ったりする日もあります。3月末から切り替えになったサマータイムも手伝って日が長くなってきました。咲く花の種類が多くなり、お天気が良く気温が高い日には、ミツバチ、アシナガバチなどのハチたちが飛びます。やっと冬から解放され、色とりどりに咲く花々の間をごちそう探しに夢中で飛行しています。見ていて嬉しくなります。しかし、春が来たと喜んでばかりもいられない方々もいます。ハチ毒にアレルギーのある方たちです。虫たちが飛び始める時期になると要注意です。
刺された場合に備えての対処法があります。その1つは減感作療法です。一定間隔で、アレルゲンの入った液を皮下注射します。アレルゲンによっては、錠剤や水剤といった経口用の剤形も開発され、コンプライアンスが向上しています。減感作療法は期待する効果が出るまで3-5年かかる方法で、皮下注射はホームドクターや皮膚科専門医が行います。辛抱強く通院しないといけません。
気をつけていても刺されてしまい、重篤な症状が出る緊急時用にいくつかの医薬品が処方されます。これらは、経口の抗ヒスタミン剤(マレイン酸ジメチンデン)、経口ステロイド剤(ベタメタゾン)とエピネフリンペンです。軽い症状であれば、抗ヒスタミン剤だけで、応急できます。刺された部分が大きく腫れるような場合は、経口ステロイド剤を追加で使用します。呼吸困難、血圧降下、吐き気・嘔吐などの危険な症状が現れれば、エピネフリンペンを使用します。場合によっては救急医を呼びます。例年より早く暖かくなった上、気温が高い日が続く年は(ドイツは通常お天気が変わりやすいです)、これらの医薬品の処方量が多くなり、急に品薄になることがあります。薬局では、アレルギー・シーズンのお天気や近隣医院の処方量を見ながら在庫調整をしています。
ハチの針が皮膚に刺さっている場合は、できるだけ早く取り除き、消毒することも大切です。ハチ毒が体内に入る量を軽減し、針に付着した細菌からの感染を予防するためです。ハチ毒にアレルギーはなくても、刺された部位から感染症をおこし、放っておくと敗血症になる場合があります。週末当番薬局には、このような虫刺されによる炎症を起こした患者さんが相談にいらっしゃることがあります。虫毒アレルギーの有無を確認し、症状がひどくなければリバノール溶液で湿布し、患部を冷やすことをお勧めします。かゆみや炎症を抑えるためには、ステロイド含有OTC医薬品のクリームの使用をお勧めします。来局者が、患部が腫れあがっているという症状を訴えれば、医師の受診を勧めます。その多くの場合、抗菌剤の処方箋を持って再度薬局へいらっしゃいます。
重篤なアレルギー症状の出る方は、外出時に緊急医薬品セットを携帯しています。どのようなものにアレルギーが出るのかを記載したアレルギーパスも一緒に持ち歩くことが大切です。搬送先の病院や緊急医が対応しやすくなります。
ハチが飛んできても冷静に振舞うことも重要です。慌てて動いたり、追い払ったり、叩いたりすれば、かえって虫が攻撃的になります。ハチが再び飛んで行くまで静かにしているほうが安全です。理由もなく、ハチたちは刺さないからです。