片頭痛の急性期治療薬(5-HT1F受容体作動薬)
2022.11.15
2022 年 6 月、片頭痛の急性期治療薬のレイボー錠(一般名:ラスミジタンコハク酸塩)が発売されました。世界初の選択的セロトニン(5-HT)1F受容体作動薬(ジタン系薬)で、トリプタンとは別の5-HT受容体に結合し、トリプタンが使えないアンメット・メディカル・ニーズを満たす可能性があります。
片頭痛の急性期治療薬には、①アセトアミノフェン、②NSAIDs、➂トリプタン、④エルゴタミン、⑤制吐薬などがあり、重症度に応じて使い分けられます。片頭痛の病態は、中枢での疼痛シグナル伝達、及び末梢での三叉神経系の過活動が関与するとされ、5-HT1F受容体との関連性が指摘されてきました。トリプタンは、5-HT1B/1D受容体作動薬で、血管平滑筋にある5-HT1B受容体を介する血管収縮と三叉神経に存在する5-HT1D受容体を介して、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やグルタミン酸などの炎症性ペプチドの放出を抑制し、発作を頓挫させます。2000年のトリプタンの登場により、片頭痛治療は大きく前進しました。しかし、発作から20~30分以内の服用(早過ぎ・遅過ぎの場合は、効果なし)という服用タイミングの難しさがあります。さらに、トリプタンが効かないノンレスポンダーや、血管収縮作用のために使えない虚血性心疾患などが存在します。レイボーは、5-HT1F受容体に選択的に結合することにより、中枢での疼痛情報の伝達を抑制し、神経原性炎症に関わる三叉神経からのCGRP放出を抑制します。5-HT1B受容体への親和性は低く、非臨床試験では血管収縮作用を示しませんでした。そのため心血管系に危険因子をもつ患者の急性期治療薬として期待されます。また、レイボーは、服用タイミングに影響されにくく、臨床試験において、発作後1時間未満に服用した場合も、1時間以降に服薬した場合も、服用2時間後に頭痛が改善しました。ただし、「予防目的で使用しない」、「24時間以内の総投与量が200mgを超えない」などの注意があります。低分子(分子量:872.81)、脂溶性(分配係数:2.97)で、血液-脳関門を通過します。浮動性めまいや傾眠など、中枢系副作用が用量依存的に発現します。ほとんどは軽度から中等度で、1時間以内に現れ、数時間以内に消失しますが、自動車運転を控えること、めまい・傾眠による高齢者の転倒には注意が必要です。