ドイツの薬剤師組織
2023/09/03
暑さの厳しい日本です。皆様お元気でお過ごしでしょうか?
今回はドイツの薬剤師組織ついてお伝えいたします。
ドイツには、薬剤師なら義務会員制の薬剤師組合(Apothekerkammer)と薬局開設者が任意で加入できる薬剤師協会(Apothekerverband)が各連邦州にあります。各連邦州の薬剤師組合(Landesapothekerkammer、LAK)をまとめるのが連邦薬剤師組合(Bundesapotheker‐kammer、BAK)、各連邦州の薬剤師協会(Landesapothekerverband、LAV)をまとめるのがドイツ薬剤師協会(Deutscher Apothekerverband、DAV)です。そして双方が統合された組織がドイツ薬剤師連盟(Bundesvereinigung Deutscher Apothekerverbände、ABDA)で、薬剤師の大代表となります。ABDA の正式名が略字と合わないのは、ABDAが昔、違う名称だったからです。
各連邦州の薬剤師組合は州内の薬剤師や薬局を法律面、学術面でサポートします。各連邦州の薬剤師協会は経営・マーケット面で開設者である薬剤師や薬局をサポートします。
薬剤師組合は、薬局スタッフの卒後教育や薬剤師、PTA(薬学技術アシスタント、欧米の他国でテクニシャンと呼ばれるスタッフです)やPKA(薬学商業従業者、在庫管理を主に行うスタッフです)の国家試験の段取りにも関っています。薬剤師協会は代表として公的医療保険と償還契約を結び、薬局が医薬品だけでなく医療用品なども処方箋に基づき患者さんに渡せ、保険請求できるようにしています。
薬剤師組合の会員費は規約を見ると次のようになっています。連邦州で額が違いますが、当州バーデン・ヴュルテンベルク州の例を挙げてみます。薬局開設者への賦課金額(薬局会員費)は、前年の売り上げ(消費税抜き)の0.093%です。年が明けると州薬剤師組合から売り上げ報告用紙が各薬局に郵送されます。記入済みの報告用紙には、税理士事務所のスタンプと責任者のサイン、そして薬局のスタンプと開設者のサインが必要です。
薬剤師組合には、薬局としてだけでなく、個々の薬剤師としても会員費を払います。薬剤師国家試験に合格すると、薬剤師組合に強制加入となります。薬剤師年会費は、週21時間以上勤務で年額216ユーロ、週21時間未満勤務者なら年額132ユーロです。年金受給者会員の年会費は75ユーロですが、仕事をしている者は勤務時間/週により上記の会費規則に従います。育児休暇は最長3年で、この間仕事をしていなければ、会費支払い免除申請ができます。仕事をしていても年収が5400ユーロ未満のものは、年会費が75ユーロです。ドイツ薬剤師には、加入できる年金保険会社が指定されていて、国やその他民間年金会社を使えません。がっちり住所を掴まれており、連携により薬剤師組合も薬剤師数とその住所を把握しています。会費支払いから逃げられないシステムです。
当連邦州薬剤師協会の薬局賦課金算定は少し複雑で、前年度の売り上げが26万ユーロ以下なら936ユーロ、26万ユーロを超え285万ユーロ以下なら936ユーロ+前年度売り上げの0.06%、285万ユーロを超えると2646ユーロ、482.5万ユーロを超えると4676ユーロ、680万ユーロを超えると6888ユーロ、877.5万ユーロを超えると9009ユーロとなっています。支店を持つ薬局開設者(ドイツでは薬剤師しか開設できない法律です)では、売り上げと支店数(最大3店舗)に応じて、さらに算定方式が異なります。
このように、通常、薬局開設者は、薬剤師組合と薬剤師協会へ賦課金(薬局会員費)、薬剤師組合に薬剤師会員費を支払っています。
各連邦州の組合・協会で集められた会費の1部はABDAの運営費にも充てられています。