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JACP医薬品情報室-75(2024/4/1)

JACP医薬品情報室
75
著者
蔵之介

● 医薬品情報室-75
原発性手掌多汗症(アポハイド)
2024.4.1

 2023 年 6 月、アポハイドローション(一般名:オキシブチニン塩酸塩)が発売されました。日本初の原発性手掌多汗症(手汗)治療薬です。同一成分薬に頻尿治療薬のポラキス錠と過活動膀胱治療薬のネオキシテープがあります。
 汗腺には、全身に分布し体温調節に関与するエクリン汗腺(冷却器官)とワキの下など毛根部に開口するアポクリン汗腺(いわゆるフェロモン)があります。エクリン汗腺は体温を下げる効率が高い、ヒトだけに「進化した汗腺」、アポクリン汗腺は毛の退化によりワキなどに残存する「退化した汗腺」と考えられています。交感神経の節後線維では、ノルアドレナリンによる神経伝達が行われ、受容体はαおよびβ受容体です。例外として、汗腺を支配する交感神経は、節前線維、節後線維ともにアセチルコリンが使われます。交感神経(アドレナリン作動性)の亢進により皮膚血管が収縮し、発熱に対し不適合な状態になるからです。
 体温が上昇すると、交感神経の節後線維からアセチルコリンが放出され、ムスカリン受容体のサブタイプ(M3)を刺激することで、エクリン汗腺からの発汗を促します。多汗症治療薬の作用機序を整理します。ボトックス注用は、交感神経終末からのアセチルコリン放出を抑制することで、抑汗作用を示します。塩化アルミニウム液と水道水イオントフォレーシスは、汗の通り道(汗管)の出口を塞ぐことで、汗の分泌量を減らします。内服および外用抗コリン薬は、アセチルコリンがムスカリン受容体(M3)に結合するのを阻害して、過剰な発汗を抑えます(図)。原発性局所多汗症診療ガイドラインにおいて、外用抗コリン薬は塩化アルミニウム液や水道水イオントフォレーシスと同じ第一選択の治療法に位置づけられました。部位ごとに推奨される治療薬とガイドライン上の推奨度(A~D)をまとめました(図)。 
 アポハイドの使用方法は、1日1回、就寝前に、適量(1回分は5プッシュ程度)を両手掌、全体に均一に塗布します。薬を塗ったまま就寝し、起床後に、流水で手をよく洗います。抗コリン作用による散瞳等の眼の調節障害が起こる可能性があるので、自動車の運転等には注意をする必要があります。

医薬品情報局PDF-75

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