● 医薬品情報室-78
人工妊娠中絶用製剤(メフィーゴパック)
2024.7.1
2023年5月、人工妊娠中絶用製剤、メフィーゴパック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)が発売されました。「妊娠中期における治療的流産」に適応のあるプレグランディン膣坐剤(一般名:ゲメプロスト)はありましたが、妊娠初期においては、初めて承認された経口の人工妊娠中絶薬です。この薬の投与は、母体保護法指定医師による確認の下で行われます。
日本国内では、妊娠12週未満に対する中絶法は、麻酔下で行われる外科的中絶(吸引または掻把法)だけでした。妊娠63日(9週0日)以下に対する人工妊娠中絶に、経口薬という選択肢が増えました。WHOのガイドラインでは、外科的処置(吸引法)とミフェプリストンとミソプロストールの順次投与による中絶法が推奨され、WHOの必須医薬品にも指定されています。経口中絶薬は、避妊に失敗した場合に服用する緊急避妊薬(アフターピル)とは異なります。メフィーゴは、妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑えるミフェプリストン(プロゲステロン受容体拮抗薬)と子宮収縮作用により子宮内容物を排出させるミソプロストール(プロスタグランジンE1誘導体)が同梱されたパック製剤。母体保護法指定医師による確認の下にミフェプリストン1錠を経口投与し、その36~48時間後に再受診し、ミソプロストール4錠をバッカル投与して、ゆっくり吸収させます。同一成分薬に抗NSAID潰瘍薬のサイトテック錠(一般名:ミソプロストール)があり、子宮収縮作用のため妊婦に禁忌となっています。
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が進んだ海外では、オンライン診療による「自己管理中絶」まであるようです。一方、日本国内では、プレグランディン膣坐剤と同様の厳重な薬品管理や報告義務、母体保護法指定医師による処方、配偶者の同意、当分の間、入院可能な有床施設で、ミソプロストール投与後は、胎嚢(レバー状の塊)が排出されるまで、入院または院内待機を必須とするなどの条件があります。そのほかにも、患者への説明と同意、管理・保管を行う薬剤師を含めたe-ラーニングの受講や医療機関の登録などが必要になります。服用後は、全例において下腹部痛や子宮出血が現れ、一定期間継続します。失神を伴う子宮出血が発現することもあるため、自動車運転等には十分注意します。また、子宮内避妊用具(IUD)またはレボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS)〔商品名:ミレーナ〕を装着している人は、投与前に除去する必要があります。