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ドイツ薬局便り-31

ドイツ薬局便り
31
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-31
万能薬セイヨウサルビア

 

2020.12.09

 

コロナ禍により、今年は感染予防に役立つ製品の需要が増えました。ドイツでは第2波到来で、FFP2マスクを買い求める来局者が増えています。春の第1波の時のように品薄にはなっておらず、ほっとしています。春より検査数が大幅に増えているからだと思いますが、第1波より感染者数が多くなっています。春よりも状況悪化していると思い、不安を隠せない、ほぼパニック状態の来局者もいるので、冷静に感染予防策を実行するよう促しています。
 
ドイツは、感染予防にAHAの実行を!と、国民に呼びかけています。AHAとは、A:Abstand(距離)、H:Hygiene(衛生)、A:Alltagsmaske(マスク)の略です。当薬局でお勧めしているのが、外出時のマスク着用の他、外から家に帰った際の手洗い・うがいと飲食前の手洗いです。インフルエンザなどの感染症が流行する時期は、日本では当然なのですが、習慣の違いか、帰宅時のうがいが大切だと思っていない人が多いようです。うがいを勧めても「のどが痛くもないのに、うがいをした方がいいのですか?」と、言われます。「うがいを定期的に行うのが感染予防に効果的ですよ。」と、うがいの慣行を勧めています。飲食前の手洗いも、家にいたのだから、汚れたものは触っていないのだから、しなくても大丈夫と、必要性を感じない人が多いです。
 
ドイツ薬局のイチオシうがい薬は、セイヨウサルビア(シソ科、Salvia officinalis)の精油など数種の成分を含有するチンキ【写真1】です。このチンキが入った練り歯磨き【写真2】も同じメーカーから販売されていて、薬局人気商品の1つになっています。
 
 
 
 
 
セイヨウサルビアは、日本でもお馴染みのハーブです。セージという名前の方が一般的でしょうか。殺菌、制汗などの薬用作用があり、ドイツでは様々な医薬品に原料として使用されています。局方品の乾燥セイヨウサルビア葉は、セイヨウハッカ(シソ科、Menthax piperita)、カモミール(キク科、Matricaria recutitaもしくは Matricaria chamomilla)、タイム(シソ科、Thymus vulgaris)、セイヨウボダイジュ(シナノキ科、Tilia cordata、Tilia platyphyllos、Tiliaxvulgaris)と同様、冬によく出るハーブです。
 
制汗が適応症のセイヨウサルビア葉乾燥エキスを含有する医薬品は、こちらです【写真3】。
 
 
 
 
 
Cur moriatur homo, cui salvia crescit in horto ?
(セイヨウ)サルビアが庭に生えていれば、どうして人は死ぬべきだろうか?
 
直訳すると、上記のような文になりますが、サルビアは万能薬だから、庭に
生えていると、その家の人は病気が治せて長生きができますよ、というような
意味でしょうか。
中世の詩文医学書 Regimen sanitatis Salernitanum からのラテン語原文引用です。
そのまま読むと大げさな表現ですが、サルビアが万能薬であることを称えている文です。
 
 
次の4枚の写真【写真4】は、セイヨウサルビアのものです。左上から時計回りに、葉、開花前のもの、乾燥して細断された葉、紫の花をつけた夏時期のセイヨウサルビアです。夏、日本の花壇を彩り、真っ赤な花をつける園芸種はドイツでは珍しかったのですが、ここ数年、園芸店でよく見かけるようになりました。
 
 
 
 
 
 
 
ドイツの薬局で 「のど飴と言えばこれ!」と、思われているのがセイヨウサルビアエキス入りのこの製品です【写真5】。
 
 
 
 
レトロ感漂うパッケージも人気理由の1つです。青色のパッケ-ジは、シュガーレスです。味は何と形容したらいいのでしょうか?なかなか個性の強い味です。日本からの客人に試してもらうことがあるのですが、これまで「わーっ、これ美味しい!」と、言ってもらえたことがありません。日本で試したことのあるのど飴は、どれも薬草味が控えめで優しい味です。
 
ドイツには医薬品として認可されたハーブ製品が多くあります。日本からの訪問者に、ドイツで咲いている草花の名前をよく尋ねられるので、自宅付近で見かける植物をリストアップしてみたら、意外に数が多くて驚き、中には医薬品原料となっているものが少なからずあって、さらに驚きました。
 
これからも、時々ドイツのハーブ医薬品を紹介していきたいと思います。

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