電子処方箋導入の混沌
電子処方箋導入の期日がどんどん延長されて既に数年経ちます。今度こそ本当のデッドラインと言われた2020年末までに、ほとんどの薬局が必要な機器の設置を済ませ準備完了でしたが、またまた電子処方箋導入日が伸びてしまいました。
今年2021年1月の予定が7月になり、それも伸びて2022年1月からは確実にスタート!ということなのですが、個人的には実現可能な気がしません。このシステム本当に大丈夫なのでしょうか?
遅れの理由には、システム安全性の確認に手間取っていることや開業医部門における機器の導入の遅れが挙げられています。稼働後に問題が出ないよう、チェックする点がさらに出てきたということらしいのですが、薬局だけに準備を急がせ、提携レセコン会社も大忙しで期限に間に合わせてくださったのに、ひどいなと思いました。多くの薬局は電子処方箋なんかない方がいいのにという意見です。処方箋内容・調剤内容のデジタル化により、医療保険会社では、償還業務処理の効率を各段に上げることができます。しかし、薬局側のメリットはあまり感じられません。処方医薬品が品切れの場合や夜勤・週末当番での調剤など柔軟な対応が要求される場合、電子処方箋では、それが難しくなりそうです。
唯一の期待は、他の医療機関でシステム上に保管されている患者さんのデータ(検査値、薬歴)をより良い薬物療法に利用できるようになることです。しかし、患者さんがデータ開示を希望しなければ閲覧不可にできます。個人の自由と個人情報を大切にするドイツの政策が裏目に出ています。
ベルリン、ブランデンブルク州のモデル地域だけは本年7月からシステム稼働しているのですが、関連情報が少ないので、今回は詳しいお話を日本へお届けできません。
ここで、電子処方箋がどのように薬局へ来るかご説明しましょう。医院・病院は処方箋内容をQRコードに変換します。携帯電話に専用アプリをダウンロードしている患者さんには、このQRコードをスマホに移します(図1)。アプリのダウンロードが不可能な携帯を所有している、もしくは、携帯電話を受診時に持参していない場合は、このQRコードを紙にプリントしてもらえます(図2)。
患者さんが希望すれば、医院・病院から患者さんが指定する薬局へ直接QRコードをネット送付することもできます。薬局ではこのQRコードをスキャナーで読み取り、プリントアウトして紙処方箋に変換します。紙処方箋には、お渡しした医薬品のID番号とトランスクリプション番号と呼ばれる数字がプリントされます。この調剤内容は専用のレセコンプログラムで管理・プールされます。専用プログラムを開きトランスクリプション番号を入力すると、調剤内容が画面に出てきます。調剤ミスなどないか確認した後、画面上の専用ボタンを押すと調剤済みの電子処方箋が集計センターに送付されます。
電子処方箋対応の練習とでも言ったらよいでしょうか。7月1日より、麻薬処方箋を取り扱う際には、調剤内容をハッシュコードと呼ばれる40桁の数字に換えて処方箋にプリントし、この紙処方箋だけでなく、レセコンにプールされた同処方箋のデジタル情報を直接集計センターにオンライン送付することが各薬局に義務付けられました。このデータは、さらに集計センターから該当保険会社へ転送されます。7、8月、このままでは償還不可の麻薬処方箋が、当薬局も含め多くの薬局へ、訂正指示と共に集計センターから送り返されてきました。薬局内でのハッシュコード変換作業において誤りがあったという理由です。修正・プリントし直して集計センターに処方箋とデジタル情報を再送付すればOKです。今回は異例に返送枚数が多かったので修正作業に手間取りました。今からこんな調子では、来年からどうなることやら…
新しいシステムにあたふたする薬局の様子は、電子処方箋が実際に導入されてから、詳細にお伝えできればと思っています。乞う御期待。