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ドイツ薬局便-29

ドイツ薬局便り
29
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-29
コロナ禍中の夏休み

 

2020.08.19

 

コロナ禍による移動規制の緩和がさらに進み、EU国同士にも関わらず国境を閉ざしていた国々は封鎖を解き、夏休み中、再び通過できる国が出てきました。

日本は、新型コロナウイルス感染による死亡者数が非常に小さい国の1つです。それにも関わらず、「どこの国も日本を褒めてくれない!」という嘆きの記事が、いつだったか出ていて驚いてしまいました。自己宣伝をしないと振り向いてもらえないドイツと、自画自賛を良しとしない日本とのお国柄の違いでしょうか?感染拡大阻止のために、政府や自治体の要請をきちんと守れる日本国民の規律は、すごいのです!と、世界に日本から発信してもいいのではないでしょうか?

日本の首都圏や大都市の人口密集度を思うと、医療崩壊を起こすような感染爆発を起こさなかったのが不思議なくらいです。要請であって拘束力はないのに、拡大防止のために不急不要の外出を控えられるというのは、日本ならではと思いました。ドイツだったら罰則のない要請は、誰も守りません。

ドイツは、感染者数に対する死亡率が欧州では低い国です。しかし、一定の国民人口数に対する死亡者数は、今年7月1日時点で、日本の約14倍の高さです。ドイツは、官学共同で感染拡大阻止に貢献してきたなどと日本のニュースでは絶賛されていますが、個人的には、これまで特別なことをしてきた、特に対応が早かったという感じがしません。対応は隣国オーストリアの方が早く、ドイツは後手にまわっています。ドイツは、オーストリアより1ヶ月も先に第1感染者が出たにも関わらず、外出規制や商店などの営業規制を出したのは、オーストリアより後です。

ドイツ内でも、何が感染抑制に影響を与えているのか、様々な観点から分析されていますが、決定的な理由は見つかっていないようです。いろいろな条件が重なっているのだと思います。国民皆保険で充実した医療制度、超過疎・超過密地帯が少ない都市分布で、たとえ小さくても生活に必要なものは何でも揃う町づくり、整った道路インフラによる医療機関へのアクセスの良さ、ホームドクター(主治医)と患者との人間関係距離の近さ、個人の自由は大切だけれど法律は遵守する国民性、家族内でも接触を避けやすい住宅環境、他連邦州との足並みは揃えにくくなる欠点はあるが、健康に関する条例は各州で出せる柔軟性など、いろいろと思いつきを列挙してみましたが、感染阻止に役立っていることを裏付けるデータや記事は見つけられませんでした。

7月初め、既に夏休みの始まった州もあるドイツです。ドイツ人は、早くて1年前から次の夏のバカンスを計画し、宿泊先や交通機関のチケットを予約します。しかし、コロナ禍で休暇変更を余儀なくされ、今年は国内でバカンスを過ごす人が多いようです。休暇先の国外で感染第2波が起こり、国境封鎖により帰国できなくなるのを心配して、予定を変更した人たちもいます。日曜大工ならぬ夏休み大工に家族総出で、家の改装や修理、庭の手入れに休暇を利用し、家で過ごす家庭もあります。

終息予想の全くつかないこの新型コロナウイルス感染症。ドイツの薬局は、3月以来、緊張の連続で業務にあたってきました。長期戦になることを踏まえ、エネルギー充填のため、薬局スタッフも充分な夏の休暇が必要となってきました。

コロナ禍中で業務にあたる薬剤師の負担は、日本でも大変重いものだと思います。猛暑の中、患者さんだけではなく、ご自身の体調も大切にされ、どうぞ元気でお仕事を続けてください。

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