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ドイツPTA便り-10

ドイツPTA便り
10
著者
アリーン・フォーゲル
● ドイツPTA便り-10
恐怖の「テスト消費者」

 

2016.08.30

 

日本の皆様、コンニチワ!(もしもしで始めようとしたら、当薬局の日本人局長から、この言葉は電話をかける時に使うのもので、「ドイツPTA便り」の冒頭のあいさつには向かないかな?と言われました。日本語は難しい…)

 

今回は、薬局へ時々調査に訪れる「テスト消費者」についてご報告いたします。服薬指導、特にOTC医薬品の相談販売で、薬局が適切な対応をしているかどうかをチェックするため「テスト消費者」が薬局へ来ます。もちろん何の予告もなしにですから、薬局のスタッフは、目の前のお客様が「テスト消費者」だとは、まず気づきません。

 

OTC医薬品の相談販売では、年齢、使用目的、現在使用している医薬品、アレルギーなど購入者に訊くべき重要な質問項目があります。残念ながら、薬局やスタッフの応対時の状況によって徹底できていないようなのです。食品と違い、副作用や相互作用にも注意しなければいけない医薬品は、購入される方から情報をうまく訊き出さないといけません。それには、薬剤師もPTAも訓練が必要ですし、日頃から意識して来局者に接するようにしています。

 

その際、W-質問法[Who, What, Which, for what(why),from when(how long)]を使います。まず、どなた(Who)が使用するのか?いつから(from when)症状があるのか?目の前の方がご自分用に購入されるのなら、さらに的を絞って質問できますし、使用年齢に注意を払います。多剤服用の可能性が高齢者より低い若い方にも念のため、どの(which)医薬品を他に使用しているか、薬局側が適したOTC医薬品を選択する際、何か(what)他にも考慮することがあるか伺います、例えば、アレルギーがあるか、妊娠中かどうかなどです。アスピリンを大人でなく、子供用にと言われれば、すぐにお子さんの年齢を確認し、同医薬品を服用できる年齢か判断します。年齢によっては、選択肢に他成分の解熱鎮痛薬があることをお知らせします。

 

どのような症状に(for what)使用されるか、なぜ(why)その医薬品を買い求めたいのかも大切です。よく似た製品名や省略名との混同を避けるため、適応症を確認します。アスピリンのジェネリックであるASSと去痰薬で気道粘液溶解作用のあるアセチルシステインのジェネリックACCは、よく混同されます。適応症を相談販売中に確認することで、間違った製品をお渡しすることが避けられますし、購入者に薬局が気を付けて販売していることを印象付けることにもなります。ASSでは、使用目的によって錠剤あたりのmg数が違うので、ここでも1質問しています。ドイツでは血栓予防投与に100mg、解熱鎮痛用に500mgの錠剤を使用するのが一般的です。

 

薬局へOTC医薬品を購入にいらしても、症状の重症度や疾患の期間よっては、すぐに医師へ相談することを勧めるのも薬局のスタッフの役割で、相談販売時に考えるべき大切な事項です。

 

各連邦州の薬剤師組合(Landesapothekerkammer、日本の県薬剤師会にあたる組織)は、管轄下の各薬局に適切な相談販売を徹底させるため、職員を「テスト消費者」として随時派遣しています。職員は、薬局で相談販売・服薬指導を受け、その内容をチェックします。製品を買った数分後に再び現れて、薬局長に改善点があれば指摘していきます。薬局スタッフが、うっかり「テスト消費者」である職員に1つも質問をせずOTC医薬品を販売しようものなら大変です。薬局長は同職員からスタッフの教育ができていないと厳しいお叱りを受けます。場合によっては、一定期間内に再度査察が入り、次回に適切な相談販売ができなかった場合には、職務不履行で訴えられることもあると勧告されるそうです。

 

当連邦州の薬剤師組合は、質の良い服薬指導をするから、薬局はその看板を掲げることができるのだと言っています。評価の悪い薬局が出続けたり、テレビなどのメディアが1部の薬局の相談販売のまずさをバッシングすると、薬剤師組合から現場である薬局に向けて叱咤激励のお達しが来ることがあります。多くの薬局では、処方箋業務が複雑になる中でも、空いた時間を調べものや勉強のために使っています。OTC医薬品メーカーが相談販売のスキルアップのために薬局内で行ってくれる30分から1時間くらいのセミナーは、営業時間内に病理・薬理・服薬指導方法などを学べるので、どこの薬局でも喜ばれています。

 

来局者の中には、相談販売後、「丁寧に製品説明・服薬指導をしてくださって有難う!」と言ってくださる方がいます。その時は、どのスタッフにとっても大変嬉しく、良い仕事ができるよう、もっと勉強しなくてはとモチベーションが上がります。

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