● ドイツPTA便り-31
乳児の予防接種
2021.05.12
ドイツで子供が生まれると1年以内に6回の乳児検診(U1―U6)があり、私たちのような新米パパ・ママを含め保護者が子供をつれて小児科を訪れることになります。この決められた検診時期を見過ごしてしまわないよう、検診手帳が親に渡されます【写真1】。この検診手帳には子供が10歳になるまでの定期検診時期が詳細に記載されています。この手帳と共に保管しておくのが、初めて小児科で予防接種を受けるときに渡される予防接種手帳(予防接種パス〔ポート〕とも呼ばれています)です【写真2】。当国ドイツでは、90%の接種率で保護者が子供に予防接種を受けさせています。
この予防接種手帳は個人が生涯保管・所有するもので、青少年・成人になってから接種されるワクチンも記入されます。子供たちが修学旅行や留学などで国外に出るときは、渡航先により予防接種手帳の提示が必要な場合があります。
第1回目の乳児検診U1は、出生時に行われます(UはUntersuchung、検診・検査というドイツ語の略)。通常の入院期間(3-4日)で母子が退院する場合は、U2は病院で行われます。乳児の入院が長くなる場合は、U3も病院で行われることがあります。生後1年目で既に、重要な予防接種のほとんどが行われます。
どの予防接種をどの時期に受けるかはロベルト・コッホ研究所(感染症に関する政府機関)の常任予防接種委員会、STIKO(Ständige Impfkomission)が決定し奨励しています。同委員会は 2ヶ月になった乳児に破傷風、ジフテリア、百日咳、インフルエンザ菌(Hib)、ポリオ、B型肝炎(これらは6種混合ワクチンで接種されています)、ロタウイルス(経口)、肺炎球菌の予防接種を奨励しています。これらの感染源に対して免疫を獲得するには3回の接種が必要で、生後4ヶ月と11ヶ月にそれぞれ2回目、3回目の予防接種が行われます。麻疹(はしか)・風疹(三日はしか)・おたふくかぜの3種混合ワクチンや、水痘(みずぼうそう)、髄膜炎菌の予防接種も生後1年以内に行われます。水痘ワクチンには、これだけの1種のワクチンと麻疹・風疹・おたふくかぜと一緒に4種混合になったものがあります。
小児科医院では、診療用に様々な種類のワクチンとその必要量を常時冷蔵しています。医薬分業により、医院は薬局を通さないとこれらのワクチンを入手できません。提携薬局に診療用処方箋がでると、その薬局は処方されたワクチンを卸やメーカーに注文し、保冷して医院へお届けします。各種ワクチンは通常写真のように1本ずつか、医院・病院での診療用に10本―50本入りのパックサイズがあり、それぞれ添付文書とロットシールが付いています。接種時には、その該当ロットシールを予防接種手帳に張り付け、接種日とワクチンの種類を記入することになっています。この手帳には予備のページもあって、新型コロナワクチンのように状況により、また、日本脳炎ワクチンのように旅行・渡航先に応じて接種を行ったワクチンも記載できるようになっています。
これらの予防接種は奨励であり義務ではありませんでしたが、2020年3月に法律が改正され、麻疹の予防接種が義務となりました。保育園、幼稚園や学校に通う子供は、はしかの予防接種を受けていなくてはなりません。麻疹を含む3種混合ワクチンは、生後11ヶ月と15ヶ月目に接種されるのが通常です。いつどのワクチンが接種されるべきか見過ごしたり、忘れたりしないよう、乳児検診の際に医師が予防接種手帳をチェックし、必要な予防接種を行ってくれることは、親にとって安心です。
とは言え、ドイツの常で、親には、いつどのワクチンを子供に受けさせるか決める権利と自由が認められています。