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ドイツPTA便り-34

ドイツPTA便り
34
著者
アリーン・フォーゲル

ウクライナ避難民への対応

2022/04/26

ウクライナ情勢の深刻さは、ドイツでも日に日に身近に感じられるようになっています。ロシアがウクライナに侵攻して約4週間後には、人口約4万人の当市へも100名以上の避難民が到着しました。医薬品やアドバイスを求め、毎日のように避難民の方が薬局へいらっしゃいます。避難民の中でドイツ語や英語を使える人は非常に珍しく対応に苦慮しています。市内には、ボランティアで避難民の通訳やお世話をする人がいますが、数が充分ではないようです。先週のことでした。40歳くらいと思われるウクライナ人のお母さんが、娘さんの咳止めを購入したいと言ってきました。それは身振り手振りでわかったのですが、詳しい病状が聴き取れないので適切な鎮咳薬を選べません。どのような咳か(空咳それとも痰が絡む?)、咳が出てどのくらいになるのか、発熱や頭痛を伴っているのかなど、いろいろ質問したいのにうまくいきません。さて、どうしたらよいのでしょう?
ロシア語を話すウクライナ人は多いそうです。避難民が来局すると必ずと言っていいくらい「ロシア語を話せる人はいませんか?」と、訊かれます。当薬局にはウクライナ語やロシア語を話せるスタッフが残念ながらいません。第2次大戦後、ロシアに抑留されたドイツ人の子孫には、1990年代に家族を連れてドイツへ戻って来ている人々がいて、ロシア語を話せます。そういった人々や次世代がスタッフとして働いている薬局があります。

【表1】ドイツ薬剤師新聞(Deutsche Apotheker Zeitung : DAZ)に掲載された薬局対応用外国語の1部
【表2】薬学新聞(Pharmazeutische Zeitung : PZ)に掲載された薬局対応用外国語の1部

ある時は、高齢のウクライナ人女性が血糖検査用スティックを希望されました。ドイツでは販売されていないロシア製と思われる血糖測定器なので、合う検査スティックがありません。交換用にとメーカーから頂いているスタートセットをお渡ししました。中に入っている測定器と検査ティックを手に取り、うなずいているので、使い方は似ていて大丈夫そうです。しかし、新しい穿刺器具の使い方を説明するのには苦労しました。
全国の薬局でこのような対応の難しさが起こっているはずです。そうこうしていると、薬局やスタッフ個人が希望で購入するドイツ薬学新聞(DAZ)や各薬局に毎週届く薬学新聞(PZ)に、服薬指導や対応で必要な単語や簡単な会話集が掲載されました。薬局でよく使われる単語がウクライナ語やロシア語などで示されています。これらの表はネット上にも掲載されていて、ダウンロードできます。コピーを各レジに備えました。役に立っています。
スマホにダウンロードできる翻訳アプリも大活躍しています。コロナ禍での薬局内対応ですので、双方マスクを着けての音声入力ですが、それでも驚くほど速く正確に会話が翻訳されています。
うまく意思疎通ができると、避難民の方は安心し、笑顔でいっぱいになります。こちらも嬉しさでいっぱいです。

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