驚きのピッキングマシーン
日本の皆様、お元気でいらっしゃいますか?
今回は当薬局に導入された「ピッキングマシーン」についてお話しいたします。同機は今月、12月の初めに設置されました。1番の驚きは、処方箋業務(ピッキング作業)が速くなったこと。操作も簡単です。ドイツは箱だし調剤で、これまで当薬局では処方された医薬品をひと箱ずつ引き出しから取り出していました。
ピッキングマシーン導入後、当薬局の処方箋業務は次のとおりです。患者さんから処方箋を受け取るとレジ横のスキャナーに通します。レジのコンピュータの画面を見ながら、スキャナーが処方箋を正しく読み取ったか確認します。読み取り完了ボタンを押すと即座にピッキングマシーンが動き出し、2本のアームを使ってマシーン内の在庫棚からスキャナーが読み取った医薬品の箱を受け取り口へと出してくれます。取り出し時間は1箱当たり数秒。レジと受け取り口を数歩往復するだけで患者さんの目の前に必要な医薬品が揃います。
購入したピッキングマシーン会社のホームページ http://www.rowa.de/portfolio
卸から納品された医薬品はマシーンの収納口に入れます。収納口からベルトコンベアーへ載せられた箱は、アーム付ロボットによって在庫棚へと運ばれ、必要時に同ロボットによって効率よく取り出せるよう並べられます。そのため、これまでの引き出し収納のようにアルファベット順ではありません。棚を見ると一定間隔で箱が列を作っていますが、無造作に並んでいます。このマシーンのおかげで、窓口対応時は患者さんの待つレジからほとんど離れなくてすみ、より多くの時間を服薬指導や相談販売に使うことができます。また、会話に集中して、落ち着いて丁寧に対応ができますし、医薬品が出てくるまでにお会計まで済ませることもできます。患者さんを1人でお待たせする時間が短くなり、患者さんにとっては薬局の対応が良くなった感じがするようです。
最大約7000箱の収容が可能といわれるこの小型ピッキングマシーンは、組み立てに約2日を要しました。メーカーから派遣された2名の技術者が1つ1つ構成部分を組み立ていく様子は、見ていて楽しくワクワクしました。3つの受け取り口がありますが、その2つは薬局の希望や設置場所により位置を変更することができます。店長も同僚も早く出来上がらないかと時間があれば作業場所を覗いていました。まず防音用の絨毯がひかれ、枠組み、壁や棚、アーム付ロボット搭載の主要部分が走るレール、そしてがアーム付ロボットが据え付けられ組み立て完了です。そのあと処方箋業務用のコンピュータにつなぎ連動可能にします。
組み立て後は、約6500個の在庫医薬品を1つずつ使用期限を確認・入力しながらピッキングマシーンへと入れていきました。収納終了まで3日かかりましたが、あとはこのマシーンにお任せ。どの医薬品がどこにあり使用期限がどれくらいかきちんと覚えていてくれます。同じ製品が数箱あっても期限の短い箱から出してくれるので、期限管理もより正確になります。
ピッキングマシーンには、この他いくつかの在庫管理機能も備わっています。ピッキングをしない時間には、機械内の実際在庫数と処方箋業務用コンピュータの在庫数を照合したり、アーム付ロボットがこまめにせっせと動いて間を詰め、より多くの医薬品箱が収納できるように場所づくりをしたりしています。この働き者ロボットが動く様子はガラスドア越しに見ることができます。使用期限に近づいたものは、ボタン1つでピッキングマシーンが自動的に出してくれるので、スタッフが棚や引き出しから1つ1つ探す手間が省けます。さらにびっくりしたのには、便利な「お掃除機能」もついていることです。専用のモップをつけると、棚を1段ずつ空けてモップがけをしてくれるのです。
ピッキングマシーンは閉鎖されたシステムで、必要以外簡単にドアを開けて中に入れないようになっています。故障や停電の際でも一定時間は内蔵された電池で医薬品の位置をモニターに示すことができ、ドアを開けて必要なものを取り出すことができます。内側が定められた温度以上にならないようエアーコンディショナーも取り付けられています。
卸から配送が来る度にピッキングマシーンへ医薬品を収納でき、また、必要なものは即座に取り出せると思うと楽しくて仕方がありません。これまで引き出しに入っていたものは全てピッキングマシーン内に収まったのに、うっかり引き出しを開けて、「あれっ、医薬品が見つからない!」と焦ることもまだ時々あります。機械になれるまでもう少しかかりそうです。このような便利な機械を開発してくれた技術者の方々に感謝したいと思います。
今年も残すところあとわずかとなりました。皆様とご家族が楽しいクリスマスをお迎えできますように!
また、来る2016年も良き年でありますようにとお祈りいたします。来年もPTA便りでドイツの薬局の様子をお知らせできることを楽しみにしています。