●JACP医薬品情報室だより 31
抗インフルエンザウイルス薬(ゾフルーザ錠)
2018.12.25
2018年3月、新しい作用機序の抗インフルエンザ薬、ゾフルーザ錠(一般名:バロキサビル マルボキシル)が先駆け審査指定を経て発売されました。
抗インフルエンザ薬には、経口薬のタミフル(一般名:オセルタミビルリン酸塩)、吸入薬のリレンザ(一般名:ザナミビル水和物)とイナビル(一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)、注射薬のラピアクタ(一般名:ペラミビル水和物)があります。そのほかに、A型インフルエンザのみに適応のあるシンメトレル(アマンタジン)と既存薬が無効の場合の新型又は再興型インフルエンザ対策用のアビガン(ファビピラビル)があります。
自己増殖ができないウイルスは、宿主細胞に①吸着②侵入③膜融合④M2タンパクにより脱殻⑤タンパク合成の起点となるキャップ構造を切り取り(キャップ拉致反応)、宿主の複製機能を使ってウイルス遺伝子を転写・複製⑥出芽⑦放出:ノイラミニダーゼにより細胞外へ遊離という過程で増殖します。
ゾフルーザⓇ錠は、ウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害し、メッセンジャーRNA 合成を阻害することでウイルス増殖を抑制します。エンドヌクレアーゼは、メッセンジャーRNAの中間部を切断するウイルス特有の酵素なので、人体には影響が少ない薬です。1回の経口投与で治療が完結するので、利便性が高いと期待されています。主に便中に排泄されるので、腎機能低下患者でも投与量を調整せずに使用できます。主な副作用は、下痢、頭痛、ALT(GPT)増加などで、重大な副作用として、抗インフルエンザ薬に共通の異常行動があります。異常行動は、就学以降の小児・未成年者の男性、発熱から 2 日間以内に発現することが多いことが知られています。