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JACP医薬品情報室-34

JACP医薬品情報室
34
著者
蔵之介
● 医薬品情報室だより-34
抗精神病薬(シクレスト舌下錠)

 

2019.05.17

 

2016年5月、抗精神病薬のシクレスト舌下錠(一般名:アセナピンマレイン酸塩)が発売されました。定型抗精神病薬は、ドパミンD2受容体を強力に遮断して、統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想など)を改善する反面、錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用があります。セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)、ドパミン部分作動薬(DPA)などの非定型抗精神病薬は、陽性症状に加えて、セロトニン5-HT2A受容体遮断作用により陰性症状(感情の平板化・意欲欠如など)にも効果があります。

シクレストは四環系抗うつ薬のテトラミド(一般名:ミアンセリン塩酸塩)に類似の構造を持ち、セロクエル(一般名:クエチアピンフマル酸塩)やジプレキサ(一般名:オランザピン)と同じ非定型抗精神病薬のMARTAに分類され、統合失調症の陽性症状、陰性症状、不安、うつ症状に効果を示します。同系統の薬は、代謝系への影響から副作用として体重増加や高血糖があり、糖尿病患者には禁忌となります。シクレストは、体重増加、血中脂質及び血糖などの代謝性パラメータに対する影響が少ないため、糖尿病に対して禁忌ではありません。また、ムスカリン受容体への親和性は示さないので、口渇、便秘、排尿障害などの副作用が少ないのも特徴です。薬物動態は、Tmaxが約1時間と立ち上がりが早く、開始用量と維持用量が同一なので、治療早期から有効用量の投与が可能です。バイオアベイラビリティは舌下投与で35%、そのまま内服した場合は2%未満しか利用されません。このため舌下投与後10分間は飲食を避けるという注意があります。海外では、統合失調症のほかに、双極I型障害の適応が承認されています。

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