免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ点滴静注)
2017年2月、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダ点滴静注〔一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)〕が発売されました。PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)を標的としたモノクローナル抗体による抗がん薬です。
免疫監視機構は、病原体やがん細胞から自己を守るシステムです。異常細胞を攻撃する、一方で、正常細胞は攻撃しないようにするブレーキ(免疫チェックポイント)もあります。1992年にT細胞の細胞死(アポトーシス)を制御する物質として、PD-1(プログラムドセル・デス・ワン)が発見されました。その後の研究で、がん細胞は細胞表面にPD-1のリガンド(受容体:PD-L1/PD-L2)を過剰に発現し、T細胞のPD-1と結合して免疫回避をしていることが分かりました。PD-1阻害薬は、PD-1とリガンドの結合を阻害することで、免疫応答を再び活性化しました。京都大学の本庶佑名誉教授は、がん治療を根本的に変える薬の開発により、2018年にノーベル賞を受賞しました。
キイトルーダは、2014年9月に発売されたニボルマブ(オプジーボ)に続く、2番目の抗PD-1抗体製剤です。癌腫により異なりますが、概ね高い奏功率を示し、全生存期間の延長も報告されています。反面、がん細胞により抑制されていた免疫系が暴走し、従来の殺細胞性抗がん薬とは異なる免疫関連副作用(イムノ・リレイテド・アドバース・イベント:irAEs)を発現します。間質性肺疾患、大腸炎・重度の下痢、1型糖尿病、甲状腺機能障害など、全身の臓器に発現し、発現時期も不明なため、投与中止後も十分な注意が必要になります。