緊急避妊薬(ノルレボ錠)
2011年5月、緊急避妊薬(ECP:エマージェンシー・コントラセプション・ピル)のノルレボ錠(一般名:レボノルゲストレル)が発売されました。避妊に失敗した場合に、女性が望まない妊娠を防ぐ最後の手段です。日本では医師の処方せんが必要ですが、海外ではモーニングアフターピル(OTC薬)として、薬局で販売されています。2016年4月に0.75mg錠から1.5mg錠に変更となり、2019年3月には後発医薬品のレボノルゲストレル錠が発売されました。
レボノルゲストレルは、第2世代黄体ホルモンであるノルゲストレルの左旋性光学異性体(薬理活性物質)です。月経周期14日頃、LH(黄体形成ホルモン)が一過性に大量分泌され(LHサージ)、成熟卵胞から卵子が飛び出します。この前に黄体ホルモンを投与すると、LHサージは抑制され、排卵が5~7日程度遅延します。精子の生存期間は5日程度です。このため治療効果は、服用後の月経の発来で確認します。ただし、不正子宮出血を月経と誤認する場合も多いので、専門医の受診が推奨されます。中絶薬ではないので、妊娠成立後(着床以降)の効果は期待できません。緊急的な使用のため黄体ホルモン量を抑え、高用量製剤でみられる悪心・嘔吐の副作用が少ない薬です。
海外データによる妊娠阻止率(排卵日付近の性交渉での妊娠を防ぐ率)は、95%(24時間)、85%(48時間)、58%(72時間)と、より早く服用した方が効果は高くなります。留意点として、その場で本人に内服させる、服用後2時間以内に吐いた場合は追加投与する、本人以外の代理受領は認められない、数日後に排卵するので避妊が必要になるなどがあります。また、妊娠したとしても催奇形リスクは上昇しません。授乳婦の場合、乳汁中に移行するので服用後24時間は授乳を避けます。薬価基準未収載のため、健康保険は使えず自費(自由診療)になります。性犯罪被害に遭った場合は、警察に届けることで公費負担(無料)となります。