MR拮抗薬(ミネブロ錠)
2019年5月、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬のミネブロ錠(一般名:エサキセレノン)が発売されました。カリウム保持性利尿薬のアルダクトンA(一般名:スピロノラクトン)、選択的アルドステロンブロッカーのセララ(一般名:エプレレノン)に続く、第3世代のMR拮抗薬と位置づけられています。
35億年前、海に誕生した生命は、進化の過程で、海を体内に封じ込めて陸に上がりました。海中にはNaが豊富ですが、陸上にはありません。Naフリーの環境下でも生存可能なシステムがレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系です。RAA系の最終産物がアルドステロンで、Kを排泄し、Naおよび水分を再吸収することで、体液量の恒常性を保っています。MR拮抗薬は、腎臓の遠位尿細管および集合管にあるMR受容体において、アルドステロンの作用を阻害し、Kの喪失なく、Naと水分の排泄を促して血圧を下げます。食塩摂取が多い日本人の低レニン性高血圧や治療抵抗性高血圧に第4選択薬として降圧効果の上乗せが期待できます。また、心肥大や動脈硬化に関わるアルドステロンを抑えるため、心保護作用があります。スピロノラクトンは、MR選択性が低く、プロゲステロンなどの性ホルモン受容体も阻害するので、女性化乳房や月経不順などの副作用が発現しやすいです。エプレレノンは、MR選択性を高めて、内分泌性の有害事象を低減し、高血圧症以外に慢性心不全の適応があります。ACE阻害薬やARBの長期投与で、アルドステロンが再上昇するアルドステロン・ブレイクスルー現象にも有効です。前2剤はステロイド骨格ですが、エサキセレノンは非ステロイド骨格です。MR選択的が高く、エプレレノンが投与禁忌の中等度腎機能障害やアルブミン尿を有する糖尿病合併高血圧にも投与が可能(慎重投与)です。なお、エサキセレノンに利尿作用はありません。MR拮抗薬に共通する副作用として高K血症があるので、血清カリウム値を頻回に測定する必要があります。