メラトニン受容体作動性入眠改善薬(メラトベル錠)
2020年6月、メラトベル顆粒小児用(一般名:メラトニン)が発売されました。メラトニン受容体作動薬としては、ロゼレム錠(一般名:ラメルテオン)に続き2剤目ですが、小児の神経発達症に伴う睡眠障害改善薬としては初の薬剤です。
メラトニンは、生体内で作られる内因性ホルモンのひとつで、夜を知らせる睡眠ホルモンとして知られています。メラトニン受容体は2つのサブタイプがあり、MT1は催眠作用、MT2は概日リズムの調整に関与しています。メラトニンの分泌は、眼から入る光刺激で調節されており、日光などの刺激で分泌が抑制されて活動状態を維持、夜間になると分泌量が増加して眠気を促し、深夜に血中濃度がピークになります。
神経発達症(自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症など)の小児では、何らかの睡眠問題を抱えていることが多いと報告されています。既存薬のロゼレムは、小児および発達障害に使用した経験がありません。このため睡眠衛生指導が中心で、国内で使用できる薬剤はありませんでした。海外では、神経発達症に伴う睡眠障害にメラトニンの有効性が報告されており、サプリメントとして入手できる国もあります。しかし、国内では市販されておらず、2019年1月に小児神経学会よりメラトニン製剤の早期承認に関する要望書が提出されました。小児を対象として承認された薬なので、成人に処方することはできません。メラトベルは、メラトニンを成分とした薬で主に肝臓のCYP1A2とCYP2C19で代謝されるため、その強力な阻害剤であるフルボキサミンマレイン酸塩が併用禁忌となっています。同薬は、小児の不安または強迫性障害に使用できる唯一の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)なので、注意が必要です。メラトベルの用量は、ロゼレム錠とは異なり適宜増減の記載があります。主な副作用は、傾眠、頭痛、肝機能検査値上昇などです。