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JACP医薬品情報室-58

JACP医薬品情報室
58
著者
蔵之介
● 医薬品情報室だより-58
新型コロナウイルス感染症ワクチン(コミナティ筋注)

 

2021.05.29

 

2021年2月、国内初のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)ワクチン、コミナティ筋注〔一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)〕が特例承認されました。
ワクチンには、(1)生ワクチン(弱毒化)、(2)不活化ワクチン(組換えタンパク/ペプチド/トキソイド)、(3)遺伝子ワクチン(DNA/mRNA/ウイルスベクター)など、さまざまな種類があります。生ワクチンは、病原性を弱めた病原体で、1回の接種で液性免疫(B細胞/抗体)と細胞性免疫(T細胞)が誘導されます。不活化ワクチンは、感染力を完全に無くした病原体で、アジュバント(免疫増強剤)や複数回の接種が必要となります。また、誘導されるのは液性免疫だけです。
従来のワクチン製造は、鶏卵などで大量培養系を確立し、継代培養による弱毒化やホルマリンなど化学処理による不活化など、開発には数年から数十年かかりました。遺伝子ワクチンは、ウイルスの遺伝子配列さえ分かれば、培養系を省略できるので、安価に大量生産が可能です。驚異的な開発スピードの反面、遺伝子は非常に不安定なため、リポ脂質で包んだり、無害なウイルスベクター(運び屋)に組み込んだり、輸送・保管には超低温冷凍が必要となります。新型コロナワクチンは、ヒト細胞への侵入時にリガンドとなるスパイク蛋白(トゲの部分)の遺伝子を標的にしています。スパイク蛋白を合成するのは至難の業ですが、ならばヒト細胞に創らせようというのがコンセプトです。コミナティは、スパイク蛋白をコードする部分を切り出し、安定化のため脂質ナノ粒に封入した[有効成分:トジナメラン]、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。細胞内にmRNAが取り込まれると、遺伝情報をもとにスパイク蛋白が作られ、中和抗体および細胞性免疫が誘導されます。ウイルス粒子の情報はないので、感染する危険性はありません。mRNAは、数日以内に分解されます。分子生物学のセントラルドグマは、DNA➔mRNA➔蛋白質です。また、DNAは細胞の核内にあり、mRNAが核内に入ることはありません。それゆえ、理論上、ワクチンのmRNAがヒトのDNAを書き換えることはありません。なお、接種の際には、文書(予診票等)による同意が必要になります(承認条件)。

                                              【2021年5月時点の情報】

 

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