基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射薬
2022.05.10
2019年9月、国内初となる基礎インスリン(持効型溶解インスリンアナログ)とGLP-1受容体作動薬の配合注射薬のゾルトファイ配合注〔一般名:インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)〕、2020年6月には、2剤目となるソリクア配合注〔一般名:インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド〕が発売されました。
日本人は欧米人に比べて、インスリン分泌能が約半分で、分泌タイミングも遅いため、食後血糖値が上昇しやすい傾向があります。空腹時血糖が目標値を達成できても、食後血糖のコントロールが不十分で、HbA1cが目標値(7.0%未満)に達しない患者(かくれ高血糖)が3割強という報告もあります。基礎インスリンは、空腹時血糖を強力に下げますが、投与に伴う低血糖や体重増加の課題が残ります。GLP-1 受容体作動薬は、主に食後血糖を下げます。体重減少に寄与しますが、投与初期の胃腸障害が懸念されます。両剤を組み合わせることで、空腹時血糖と食後血糖を同時にコントロールし、HbA1c を改善することが期待されます。また、基礎インスリンによる低血糖や体重増加とGLP-1受容体作動薬による消化器症状を低減できます。インスリン療法には、基礎インスリンと経口薬を併用するBOT(Basal Supported Oral Therapy)や超速効型インスリンを組み合わせた「強化インスリン療法」があります。基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬を併用するBPT(Basal supported post Prandial GLP-1 Therapy)は、その間に位置づけられます。ゾルトファイ配合注は、トレシーバ注(持効型溶解インスリン製剤)とビクトーザ皮下注(長時間作用型GLP-1受容体作動薬)、ソリクア配合注は、ランタス注(持効型溶解インスリン製剤)とリキスミア皮下注(短時間作用型GLP-1受容体作動薬)の組み合わせです。配合比率は固定されますが、1日1回の注射で済むので、患者負担は軽減されます。配合薬の用量単位は、インスリン製剤のような「単位」ではなく、「ドーズ」が使われます。