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JACP医薬品情報室-63(2022/07/07)

JACP医薬品情報室
63
著者
蔵之介
● 医薬品情報室-63
ミトコンドリアへの作用を介する新機序の糖尿病治療薬

2022.07.07

 2021年9月、新しい作用機序の糖尿病治療薬としては、SGLT2阻害薬の発売以来、7年振りとなる新薬のツイミーグ錠(一般名:イメグリミン塩酸塩)が、世界に先駆けて発売されました。
 糖尿病は、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群。経口血糖降下薬には、①血糖非依存的インスリン分泌促進薬〔スルホニル尿素(SU)薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)〕、②血糖依存的インスリン分泌促進薬〔DPP-4阻害薬、GPL-1受容体作動薬〕、➂インスリン抵抗性改善薬〔ビグアナイド薬(メトホルミン)、チアゾリジン薬〕、④糖吸収・排泄調節系薬〔α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、SGLT2阻害薬〕があります。 
 近年、糖尿病の発症機序であるインスリン分泌能や感受性の低下に、ミトコンドリア機能障害が関わっていることが明らかになりました。ツイミーグの作用機序は、ミトコンドリアへの作用を介する、膵β細胞における血糖(グルコース濃度)依存的インスリン分泌促進作用(膵作用)と、標的臓器である肝臓での糖新生の抑制、骨格筋での糖取り込み能の改善という2つの糖代謝改善作用(膵外作用)と推定されます。類似した基本骨格を有するメトホルミンには、頻度は低いものの、脱水や腎機能低下時に、「乳酸アシドーシス」という重大な副作用があります。ツイミーグの臨床試験では、乳酸アシドーシスは認められていません。ツイミーグのミトコンドリアに対する作用は、Complex I の阻害など、メトホルミンと共通する部分もありますが、Complex Ⅲ の活性回復など差違があるので、メトホルミンとはリスクが異なる可能性があるとされました。日本ではDPP-4阻害薬、海外ではメトホルミンが第一選択薬の位置づけです。ツイミーグは単剤療法だけでなく、既存薬との併用療法も可能です。ただし、インスリン製剤やSU薬、グリニド薬との併用による「低血糖」、メトホルミンとの併用による「消化器症状」の増加には注意が必要です。医薬品リスク管理計画書(RMP)には、腎機能障害患者での安全性、低血糖、消化器症状、乳酸アシドーシス、心血管系リスクへの影響の検討が記載されています。今後、腎機能低下時の安全性が確立されれば、インスリン分泌促進と抵抗性改善の2つの作用を持つツイミーグが、ファーストラインの選択肢になる可能性を秘めていると思われます。

 

 

 

医薬品情報局PDF-063

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