ニコチン依存症治療アプリ&高血圧症治療補助アプリ
2022.09.17
2020年12月、禁煙治療を補助する「ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」が発売されました。2022年4月には、高血圧治療を補助する「高血圧症治療補助アプリ」が薬事承認されました。両アプリとも、疾患別としては世界初になります。
いよいよ医師が「治療用アプリ」を処方する時代が到来ました。独自のアルゴリズムやウェアラブル機器を使用するデジタル治療です。2010年に、FDA(米国食品医薬品局)は、世界に先駆けて米国ウェルドック社の糖尿病治療用アプリ「ブルースター」を承認しました。日本でも、2014年に「薬事法」が「医薬品医療機器等法」に改正され、ソフトウェア単体でも「医療機器プログラム」として規制対象になったことを契機に、開発が加速しました。
禁煙治療補助アプリは、「患者アプリ」、呼気中CO濃度を測定する「喫煙チェッカー」、「医師アプリ」から構成されます。アプリには、喫煙欲求が急に高まった場合の自動チャット機能や学習、記録などの機能があります。医薬品では解消できない心理的依存に対して、最適な対処法を提案することで、禁煙モチベーションを維持します。臨床試験では、禁煙達成率が有意に改善されました。保険診療として、プログラム医療機器等医学管理加算が新設されました。なお、同アプリと併用する禁煙補助薬のチャンピックス錠(一般名:バレニクリン)の一部製品に発がんリスクを高める可能性のあるN-ニトロソバレニクリンが検出され、2021年6月から出荷停止中です(再開は、2022年後半以降の見込み)。
高血圧治療補助アプリは、「患者アプリ」と「医師アプリ」で構成されます。高血圧治療ガイドライン2019に準じた生活習慣の修正をサポートします。処方の流れは、❶処方コードの発行(医師:受診時)、❷アプリのダウンロード、処方コードを入力、アカウント登録(患者)、❸個々の患者の状況に合わせた、取り組むべき行動の提示(アプリ)、❹血圧推移や生活習慣の確認(医師:再診時)。アプリの使用により、限られた診察時間や診察と診察の間の空白期間でも、食事、運動、睡眠等に関する知識(1回5分、計14回)や減塩、減量、運動、睡眠管理、ストレス管理、節酒に関するサポート情報が毎日、配信されます。患者の意識や行動変容を促して、生活習慣の改善により降圧効果が期待できます。医薬品と異なり、因果関係のある有害事象は報告されていません。