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JACP医薬品情報室-66

医薬品情報室
66
著者
蔵之介
● 医薬品情報室-66

片頭痛の発作予防薬(CGRP関連抗体薬)
2022.10.12

 片頭痛の発作予防薬として、2021年4月に抗CGRP抗体薬のエムガルティ皮下注〔ガルカネズマブ(遺伝子組換え)〕、同年8月に同じく抗CGRP抗体薬のアジョビ皮下注〔フレマネズマブ(遺伝子組換え)〕と抗CGRP受容体抗体薬のアイモビーグ皮下注〔エレヌマブ(遺伝子組換え)〕が発売されました。

 片頭痛が月に2回以上、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上の患者で、予防治療の実施が検討されます。既存の予防薬は、ドラッグ・リポジショニングによるバルプロ酸、プロプラノロール、ロメリジン(以上、保険適応)、アミトリプチリン、ベラパミル(以上、適応外だが保険は適用)などで、片頭痛の特異的な治療薬ではありません。治療効果は十分とは言えず、効果発現までの期間も長く、長期の服用のために副作用による脱落例が少なくありません。

 片頭痛の病態は、いまだに不明な点も多いのですが、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が重要な役割を果たすことが明らかとなり、これを標的にしたモノクローナル抗体(CGRP 関連抗体薬)が開発されました。片頭痛の病態にアプローチした初めての薬剤で、急性期治療のトリプタンに匹敵する、予防薬におけるキードラッグの誕生です。8 年ぶりに改訂された頭痛診療ガイドライン(2021年)では、予防療法において、①Group1(有効)、②Group2(ある程度有効)、③Group3(経験的に有効)、④Group4(有効、副作用に注意)、⑤Group5(無効)のなかで、最も高いGroup1にグレーディングされています。

 CGRPは、三叉神経終末から頭蓋内の硬膜血管に放出される神経ペプチドで、血管拡張、血漿蛋白漏出、神経原性炎症の直接の原因とされます。エムガルティとアジョビは放出されたCGRPに結合し、アイモビーグはCGRPの受容体に結合することで、CGRPの生理活性を阻害、片頭痛発作を予防します。CGRP 関連抗体薬は、分子量がおよそ148,000で、脳-血液関門を通過しないため、眠気やめまいなどの中枢神経系の副作用が少ない薬です。また、半減期が約1ヵ月と長いため、月1もしくは3ヵ月に1回の投与でも十分効果が期待できます。治験段階では、薬理作用を減弱させるADA(抗薬物抗体)や中和抗体の発現率は低く、発現しても効果に明らかな影響は認められませんでした。アイモビーグは、海外市販後において「重篤な合併症を伴う便秘」の報告があり、便秘の既往歴や消化管運動低下を伴う薬を併用している患者では、注意が必要です。 

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