● 医薬品情報室-85
アレジオン眼瞼クリーム0.5%
2025.8.1
2024年5月、世界初となる花粉症の塗り薬、アレジオン眼瞼クリーム(一般名:エピナスチン塩酸塩)が発売されました。眼瞼(まぶた)から経皮的に吸収させることで、1日1回投与を可能にした新しいコンセプトの外用薬です。
1994 年に発売されたアレジオン錠(一般名:エピナスチン塩酸塩)は、第2世代非鎮静性抗ヒスタミン薬で、ヒスタミン受容体に対するインバース・アゴニスト作用(逆作動)があります。経口薬は、「気管支喘息」、「アレルギー性鼻炎」、「そう痒性皮膚疾患」、点眼薬は「アレルギー性結膜炎」の適応で、2013年に1日4回のアレジオン点眼液、2019年に1日2回のアレジオンLX点眼液が発売されました。従来のアレルギー性結膜炎治療薬は、1日2~4回の点眼が主流です。眼瞼クリームは、アレジオン点の10倍、LX点の5倍の濃度で、眼の周りに塗布すると皮膚を透過して、作用部位である眼瞼結膜・眼球結膜に到達します。塗る量は、片眼あたり約30mg(絞り出した量として約1.3cmの長さ)、1FTU(フィンガーティップユニット:人差し指の先端から第1関節まで)の半分の量です。塗布部位は、上瞼だけではなく、下瞼にも塗ります。ゴシゴシすり込むと、刺激で痒みが誘発されるので、上下の眼瞼に半量ずつ取り、ステロイド薬のように優しく広げます(図)。
季節性アレルギー性結膜炎患者の実態調査では、痒いと感じる部位は、「目頭」、「瞼の縁」、「瞼の裏側」の順で、痒いと感じる時間帯は、「起床時」、「午後」、「就寝前」でした。眼軟膏ではないので、結膜嚢内に入れて使用できませんが、軽く眼を閉じて、「目頭」と「瞼の縁」を意識して塗ります。眼から離れるほど効果は弱まります。誤って眼に入った場合は、直ちに水で洗い流します。点眼薬は、投与直後に高濃度を示し、その後、速やかに眼表面から消失します。眼瞼クリームは、塗布後8時間に最高濃度を示し、72時間かけて緩やかに減少します。塗布直後に、入浴・洗顔すると洗い流されてしまいます。「モーニングアタック」の軽減には、就寝前が基本です。ほかの点眼剤と併用する場合は、眼瞼クリームを最後に使用します。痒みの有無にかかわらず、毎日、同時刻に塗布するプロアクティブ療法が推奨されます。主な副作用として、瞼の痒みや赤みがあります。
「上を向くのが困難」、「上手く目に入らない」など、点眼動作が苦手な高齢者やコンタクトレンズ装用者に適する剤形として期待されています。幼児・小児も有用だと思われますが、点眼液と同じく12歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。ドライシロップには、小児適応(3歳以上)がありますが、許容限度値を超えた分解物のため、現在は販売中止になっています。眼瞼クリームおよびベンザルコニウム塩化物を含まないアレジオン点、LX点は、コンタクトレンズ装用時も点眼可能ですが、後発品の一部に含む製品があります。スイッチOTC医薬品として、鼻炎用内服薬があります。眼瞼クリームは、1本(2gチューブ)で約1ヵ月間使用できます。