● 医薬品情報室-87
てんかん重積状態のレスキュー薬(スピジア点鼻液)
2025.10.1
2025年9月、国内初の経鼻投与の抗てんかん薬、スピジア点鼻液(一般名:ジアゼパム)が発売されました。「てんかん重積状態」に対するレスキュー薬で、適切な指導を受けた保護者(家族)が医療機関外でも投与可能な製剤です。
てんかん発作は通常は1~2分で停止しますが、5分以上続く何時もより長い発作や短い時間の中で繰り返し起こる発作は、「てんかん重積状態」に移行するおそれがあり、速やかに治療を開始する必要があります。発作が30分以上続くと脳に障害を残すリスクが高まり、生命予後にかかわることもあります。てんかん重積状態には、ジアゼパム、ロラゼパム、ミダゾラムなどの注射液を静脈内投与します(ジアゼパム注射液は注腸も)。そのほか、頬粘膜投与製剤のブコラム口腔用液(一般名:ミダゾラム)やエスクレ坐剤(一般名:抱水クロラール)があります。しかし、発作に伴う嘔吐などで薬液が口腔外に出る、坐薬は小児が対象で効果発現までに30分もかかるなどのアンメットニーズがあり、日本てんかん学会など6団体から経鼻投与製剤の早期承認の要望書が出ていました。
スピジア点鼻液は、成人及び2歳以上の小児(6歳未満の小児は医師のもとで使用)が対象です。成人において初めて医療機関外で投与可能な薬になります。鼻腔内投与は、吸収表面積が大きく、初回通過代謝を回避できる利点があります。トコフェロール(可溶化剤)やドデシルマルトシド(吸収促進剤)を添加して、バイオアベイラビリティを改善しました。年齢および体重に応じて、1回5~20mgを鼻腔内に噴霧します。投与量により1回1個(片方の鼻に1回)もしくは2個(両方の鼻に1回ずつ)を使用します。1回使い切り製剤なので、噴霧テスト(空打ち)や再使用はしないよう指導します。効果不十分な場合は、4時間以上あけて2回目の投与ができます。原則として、この薬の使用後(事前に医師と相談しておく)、投与後10分以内に発作が停止しない場合、呼吸の回数が少ない、浅い、または止まった場合、2回目投与後に発作が再発した場合などは、救急搬送の手配をします。貯法は、光と湿気を避け、室温(1~30℃)で保存します。患者が5万人未満の希少疾病用医薬品に指定されています。