メルマガ新着

ドイツ薬局便り-17

ドイツ薬局便り
17
著者
アッセンハイマー慶子

●ドイツ薬局便り-17

連邦議会選挙の結果と薬局のゆくへ

 

2017.09.30

 

先日9月24日は、ドイツ連邦議会選挙投票日でした。夕方18時の投票締め切り後、多くのテレビ局は、短時間おきに開票結果を報道していました。「ドイツのお母さん」のニックネームを持つ、アンゲラ・メルケル首相が率いるドイツキリスト教民主同盟(略してCDU)が第1党となり、同氏の4期目続投が確実となりました。

どの政党が政権を握るかでドイツ人の生活は変わります。ドイツ薬局の行く末も政策次第で、選挙結果は薬局経営者にとっても大きな関心ごとです。単独過半数は取れなかったものの、薬局に不利な政策を打ち出していないキリスト民主同盟が選挙戦に勝利し、多くの薬局経営者は、まず、ほっとしています。

現在、ドイツ薬局の1大感心事は、処方箋の国外流失をいかに防ぐかです。国内法では、処方箋を薬局に送付すれば、処方された医療用医薬品の宅配は合法です。その際、自己負担額の免除・割引やポイントをつけることはドイツ国内では禁止されています。しかし、これが合法な隣国の薬局へ処方箋を送り、配達や受け渡しを国内の薬局や企業が代行するということができるようになりました。薬局と国内医薬品市場を守るか、自己負担軽減という患者さんの利益を優先するかで、世論も政党の意見も割れています。

店数に制限のないチェーン店解禁がいつ合法になるか否かも、ドイツの薬局にとっては大問題です。現行の国内法では、チェーン店展開は許可されていません。薬剤師以外に開設権がないこと。また、原則的に薬剤師1人1局の開局。さらに、開局した薬剤師自身が自局の経営・管理に責任を持ち、自局でフルタイム勤務することが義務付けられており、物理的にチェーン店展開ができません。例外が、2004年から許可された、本店1店につき3店までの支店経営です。

ドイツがこのような国内法を固持してきた理由は、外資のチェーン店侵入を阻止し、国内薬局の淘汰を防ぎ、規模の大小や立地条件にかかわらず各薬局が安定した経営ができ、その結果、ドイツ通津浦々まで途切れることのない医薬品供給体制を維持することにあります。また、医薬品は必要であるから販売されるべきで、薬局が利益目的のみに販売してはならないということでもあります。

どんな薬局政策がこれから打ち出されてくるのでしょう。ドイツの薬局は、スクラム組んで政治家と国民にいきつけ薬局大切さを説き、ドイツ薬局の伝統と誇りを守り切れるでしょうか?「自分のいきつけ薬局は、なくなってほしくない!」と、思ってくれる患者さんが1人でも増えてほしいと、対応時の1言1言に熱意がこもります。

メルマガ新着

TOPIC月別アーカイブ