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ドイツ薬局便り-33

ドイツ薬局便り
33
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-33
ハンパじゃないのよ、ドイツのエコは

 

2021.02.21

 

工業・輸出国のドイツは、各地に工業地帯があります。日本のように海に囲まれておらず、9か国との間に地続きの国境があります。歴史上からしても、近隣国とのトラブルは何としても避けなければなりません。そこで、環境問題でも周りの国に気を遣います。工業廃水やばい煙を国境近くで多量に排出すれば、当然隣国はクレームをつけてきます。そういった地理や外交事情も手伝ってか、ドイツ人のエコ意識は高く、若者の環境・自然保護への関心も大きいです。ドイツには緑の党という政党があり、環境に悪影響を及ぼすような政策には猛然と反対します。経済・産業優先か環境・自然保護優先かで、国会のみならず地方議会の討論までが、もめにもめることもあります。ドイツでは、大学生のエコ意識が特に高く、大学町で選挙があると緑の党の得票率が高くなるのは有名な話です。今回はドイツのエコぶりをご紹介したいと思います。
 
まず、ごみの分類が細かいです。生ごみ、普通ごみ、プラスチック類、紙類、家電ごみ、ガラス、金属、粗大ごみ…。生ごみは、専用の緑色の容器に入れて回収してもらいます。個人で腐葉土にして菜園や花壇に利用する家庭もあります。この分類の多さから、家庭では当然ごみを分別する容器も定期回収日までに置いておく場所も必要です。住宅の地下室や庭の隅がその目的に使用されています。ビン代のついていないガラスの空きビンは、緑、茶、無色に色分けにして地区内に置いてある専用コンテナ【写真1】に投げ込みます。うっかり色を間違えて投げ込まれたビンはどうするのでしょう?回収センターでは、センサーのついた機械で破片を選別し、溶解再利用しても瓶の色が混ざらないようにするらしいです。
 
 
【写真1】 空きビン回収用コンテナ
 
 
回収マークの付いた金属・プラスチック類は、自治体が配布するゲルベザック【写真2】といわれる黄色の袋に集めて2週間おきに家の前に出して回収してもらいます。ビン代付きのPETボトルやガラスの空きビンは、スーパーマーケット入り口などに設置されている回収用の機械に入れて数をカウントしてもらいます。カウント終了ボタンを押すと、レジでビン代を返金してもらえるチケットが出てきます。ビン入りの飲料水をまとめ買いするドイツでは、酒類・飲料水・清涼飲料専門店で必要な飲み物を購入します。そこでもビンの返却は可能で、ビン代が返ってきます。
 
【写真2】 ゲルベザック 左から 巻物状にして配布されたもの、広げた1枚、回収日に外へ出されたもの
 
 
回収・ゴミ分別しやすい工夫も努力もすごいものです。【写真3】は市販されているヨーグルトの1製品です。容器はプラスチック、ふたはアルミニウム、ラベルは紙ですが、このラベルにはミシン線が入っており、ワンタッチで簡単にプラスチック容器から外れるようになっています。漂白していない用紙を使っている上、紙の裏側にはエコに関する情報が印刷されていて、啓発効果も狙っています。環境学を勉強しながらヨーグルトをいただけるという仕組みです。
 
【写真3】 左から 開封前のヨーグルト、ミシン線に沿ってラベルを剥がすところ、ラベル裏側のエコ情報
 
 
ごちそうさまの後は、プラスチックの容器とアルミニウムのふたをきれいに洗ってゲルベザックに入れます。
 
次は、ティッシュペーパーの箱のBefore/Afterです。1度に何枚も出てこないよう、取り出し口には、調節用のビニールがついていましたが、メーカーはこれを紙に変えました【写真4】。これにより箱は100%紙ごみになります。さらには窓付き封筒です。これも、ビニールではなく紙になったものが出回るようになりました【写真5】。
 
 
 
 
ドイツでは、2016年6月に施行された法律により、プラスチックのレジ袋を無料で配布することができなくなりました。薬局でもプラスチック袋は、ほとんど使用していません。紙製でも袋はいりません、マイバッグ持参です、という来局者が増えつつあります。お渡しした布製バッグをきれいに洗濯し、バチっと伸ばしてアイロンをかけ、それをまた、角も線もきれいにそろえて四つ折りにし、さらにバチっとアイロンをかけて持っていらっしゃる方がいます。「おたくでいただいたエコバッグです。帰りは、ロゴのついているほうを外側にして、薬局の宣伝をしながら歩きますね。」と、嬉しいことを言ってくださいます。こういった薬局リピーターの方がいらっしゃるから、どこの薬局もこのコロナ禍中、頑張れるのだと思います。
 
販売されるレジ袋は木綿製、不織布製など再度使用できるものに変わりましたが、不織布も原料によってはプラスチックです。しかし、そこは、まだそれほど気にしていないようです。場合によっては、ちょっとハンパでないと現場が困ってやっていけないドイツのエコのお話でした。

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