パーキンソン病治療薬(デュオドーパ配合経腸用液)
2016年9月、パーキンソン病(PD)治療薬のデュオドーパ配合経腸用液(一般名:レボドパ/カルビドパ水和物)が発売されました。既存薬でコントロールできないウェアリングオフ現象に対するデバイス補助療法用製剤です。
ドパミンは、PD治療の標準薬であり、最も強力に運動症状を改善させる薬です。血液脳関門(BBB)を通過しないので、通過する前駆物質のレボドパを投与します。
レボドパは小腸上部で吸収され、脳内のドパ脱炭酸酵素によりドパミンになります。レボドパは、末梢組織でドパ脱炭酸酵素により約70%が、COMTにより約10%が代謝され、脳内に到達するのはわずか数%に過ぎません。
そのため大量投与が必要になり、悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器系副作用を引き起こします。食前・空腹時投与や酸性飲料(レモン水)と併用のほうが吸収は良いとされます。
ドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)のカルビドパ水和物やベンセラジド塩酸塩は、末梢でレボドパの代謝を抑制して脳内移行量を増やす一方、BBBは通過しないので脳内ドパミン量には影響しません。
レボドパ投与量を約1/5に減量でき、その分、消化器症状が軽減されます。レボドパ含有製剤には、L-ドパ単剤のドパストンカプセル・静注(一般名:レボドパ)とレボドパ/DCI配合薬のネオドパストン配合錠(一般名:レボドパ/カルビドパ水和物)、マドパー配合錠(一般名:レボドパ/ベンセラジド塩酸塩)、レボドパ/カルビドパにCOMT阻害薬を配合したスタレボ配合錠(一般名:レボドパ/カルビドパ水和物/エンタカポン)などがあります。
デュオドーパは、ゲル状にしたレボドパ/カルビドパ水和物を、コンピュータ制御式の小型専用ポンプで、胃瘻から空腸に持続注入します。進行期 PD患者では胃排出能が低下しやすいこともあり、経口薬に比べて安定したレボドパ濃度の維持を可能にします。オフ時間の短縮やジスキネジアの改善が期待されます。チューブを留置するため、内視鏡を用いた胃瘻造設術が必要になります。