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ドイツ薬局便り-14

ドイツ薬局便り
14
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-14
OTC医薬品相談販売へのサポート

 

2017.01.23

 

前回は、OTC医薬品の相談販売が薬局業務の中で重要性を増した経緯についてお話いたしました。今回は、規模の大小に関わらず、各薬局が柔軟にOTC医薬品の相談販売を行えるしくみについてご報告したいと思います。

 

薬局が患者さんに合ったOTC医薬品を提供するためには、学術、マーケティング、供給と、あらゆる面でメーカーや医薬品卸、コンピュータシステムのサポートが欠かせません。自分が知らないOTC医薬品は、お勧め・販売しにくいですし、在庫のないものを希望されても発注から入荷までに時間がかかれば、患者さんは困ってしまいます。また、薬局も1商店ですから、良い製品をお勧めすると同時にどうしたら利益がアップするかも考えなければいけません。

 

OTC医薬品メーカーは、次のように薬局をサポートしています:

 

学 術

・医家・薬局向け文献・情報の提供

エビデンスのしっかりした製品はお勧めしやすいですし、他社製品と比較する参考データになります。電話で問い合わせると学術担当の方が応対してくださり、文献などは、郵送もしくはメールで届きます。

 

・Eラーニング

いつでもどこでも始められるのでスタッフに好評です。

 

・薬局への出張セミナー

15分から1時間くらいで、病理・薬理、OTC医薬品の特徴、患者さんがそのOTC医薬品を使用するメリット、同製品の勧め方などを学べます。薬局内で、重要ポイントを短時間で学べ、スタッフ全員が業務時間内に参加できるので薬局にとっては有り難いオファーです。

 

マーケティング

・宣伝・広告

テレビや雑誌の宣伝・広告で視た製品(パッケージ)が薬局のショーウィンドウと薬局内で再認識できると、薬局でも製品を勧めやすいですし、患者さんもその製品を受け入れやすいようです。もちろん、そのOTC医薬品が患者さんに合ったものか、患者さんとのやりとりの中で確認しますし、不適切な製品は患者さんが希望してもお勧めしません。

 

・ショーウィンドウ用デコレーションキットの提供

各薬局公道に面してショーウインドウがあり、季節や今ホットなテーマに合う製品の宣伝をします。OTC医薬品メーカーに依頼すると送ってもらえます。

 

供 給

・メーカー直送と購入条件

メーカー直送ですと使用期限の長く、ロット番号のそろったものが入荷するので在庫管理が楽になります。OTC医薬品セールス担当の方は、だいたい4半期のサイクルで注文を取りに薬局へ来られます。カゼ薬や花粉症治療薬といったシーズン製品ですと半年前くらいから注文を取りに見えますが、少量でも良い購入条件がつきますので、中小規模の薬局でも購入しやすくなります。

 

卸のサポート:

・供給体制

ドイツ医薬品卸の強みは、品揃えの良さ、配送の速さ、1製品1箱からでも注文を受ける柔軟性です。薬局で販売できるものなら医療用医薬品のみならずOTC医薬品、サプリメント、化粧品、医薬部外品、介護用品など何でも扱います。薬局から定時注文を受けると約45分で配送準備を完了し配送車が出発します。道路網の利便性を生かし、流通拠点から走行2~3時間かかる薬局まで品物を届けています。多くの薬局は卸2社と提携しており、2社合わせると1日数回の配送があります。薬局は、量・品揃え、共に迅速な補充が可能です。ドイツの薬局はネット販売より速く品物をお客様にお渡ししています。

 

ソフトの充実:

・薬局で必要なプログラムがオールインワンのパッケージ

どのメーカーのソフトを使用しても、ABDAデータバンクとLauerリストがセットで入っています。前者は学術用データバンク、後者は薬局で扱える全製品リストです。この2つをもとに、検索機能を駆使して、スタッフが患者さんの希望する製品にたどり着けます。成分や名前から希望の製品を探したり、合わない賦形剤や色素が入っていないかチェックしたりすることも可能です。患者さんが購入したいOTC医薬品に、追加でお勧めできる製品を画面で提示するといった機能もついています。提携卸とオンラインでつながっているので、患者さんが希望するものが卸にあり、次の配送で取り寄せられるかも瞬時に確認できます。

 

このようにメーカーと医薬品卸とソフトの強力なバックアップがあるので薬局は安心して業務に集中でき、患者さんの希望に柔軟に対応できるのです。

 

2015年3月、要指示薬だった緊急ピルがスイッチOTC医薬品となり、薬局でのOTC医薬品相談販売は新たな局面を迎えました。スイッチ数か月前からメーカー主催のセミナーが各地で行われ、3月解禁に向けて準備をしました。相談販売時にもれなく質問できるよう、標準問診票が作成され、各薬局に配布されています。デリケートな質問の続く問診票内容を見たときは、スタッフ一同ため息をつきました。メーカーにはホットラインが設けられ、いつでも問い合わせができますが、それでも責任の重いと感じられる相談販売です。1例1例適切なアドバイスの後に緊急ピルをお渡ししたか自問が続きます。

 

数年前のことです。カゼ薬の相談販売がどのようになされているか、いくつかの薬局にテスト消費者を派遣したテレビ取材がありました。その結果を報告する民放テレビ番組では、不適切な例ばかりが強調され、薬局バッシングにつながったことがあります。その直後、当薬局のある連邦州の薬剤師会は、薬局のスタッフが良い医薬品アドバイスをするからこそ、我々は薬局の看板が掲げられるのだと、相談販売の質の向上を促す叱咤激励文書を州内各薬局に宛て送付しました。

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