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ドイツ薬局便-9

ドイツ薬局便り
9
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-9
薬局の顧客カード

 

2016.03.22

 

顧客カードの始まり

今日では、機能も多種多様、小売店から大企業まで数多くの販売業者がお勧めしている、おなじみの顧客カードですが、ドイツでは1959年に某百貨店が導入したのが始まりだそうです。

 

薬局での普及と効用

薬局では十数年前から普及し始め、今では、どこの薬局でもオリジナルの顧客カードを作成していると言っても過言ではありません。クレジットカードサイズで表面は薬局のロゴ、裏面にスキャナーで持ち主を確認できるバーコードがプリントされています。サービス・業務内容やスタッフの写真などを顧客カードに印刷させている薬局もあります。メーカーにもよりますが、最低数300~500枚くらいから注文を受けてくれます。

(写真上)当薬局の顧客カード:表・裏面

 

患者さんへのメリットは

◆ 薬歴・服薬管理の一元化

◆ 相互作用・配合禁忌のチェックによる安全性の向上

◆ ポイント収集や価格割引の利用(処方箋薬以外)

◆ 薬局からの郵便や電話による定期的な行事案内・情報の入手

◆ 自己負担免除カードの取得や控除に必要なレシート収集・管理の不要

 

薬局へのメリットは

◆ 顧客の確保と信頼関係の強化

◆ 業務の効率化

◆ 薬歴・服薬管理の質向上と効率化

◆ 相互作用・配合禁忌チェックの質向上と効率化

 

などです。

 

顧客カードの普及が急に拡大にしたのは2004年の医療改革導入後です。大人へはOTC薬の保険償還外しが始まり、医療費の自己負担料も上がりました。医薬品出費が増えた患者さんへ、どのようなサービスでお返しするか、また、どうすれば、できるだけ多くのお客様に、自局を“行きつけ薬局”として利用してもらえるかの1案が、顧客カードの導入です。同年からは、公定価格であったOTC薬が自由価格になり、カードによるポイントや割引をつけることが可能になりました。こうして薬局で割引のきく品目が増え、顧客カードを持つことの経済的メリットがより大きくなったことも、カードが普及した理由の1つです。ただし、自己負担額と公定価格の要処方箋薬には、ポイントや割引をつけてはいけないことになっています。顧客カードによる割引率に規制はありませんが、医薬品乱用につながらないよう、また、薬局間でのむやみな競争を避けるよう、割引率は最高でも消費者購入価格の3~5%が好ましいとされています。年末までに貯まったポイントを自局の商品券の形で顧客に還元している薬局が多いようです。

 

ドイツ税制上、自己負担・医薬品費を含む医療費は控除対象になります。収入、既婚・未婚、扶養する子供の数により控除額が異なりますが、一般に収入の3%(慢性疾患罹患者は1%)を超えた医療費分が控除されます。顧客カードがあればレシートをいちいち収集する必要がなく、いつでも薬局で自己負担費や医薬品購入費のリストを作ってプリントアウトしてもらえます。

 

ジェネリック処方が多く、箱出しのドイツでは、毎回メーカーが変わり、包装が違えば、たとえ同じ成分でも患者さんは混乱し、アドヒアランスにも影響が出ます。顧客カードをお持ちであれば、前回どのメーカーのジェネリックをお出ししたかが確認できます。OTC薬相談販売の際、「この間、購入したのと同じ頭痛薬を下さい。製品名は、えーっと、なんでしたっけ?箱が緑で、白くて丸い錠剤(多くの錠剤が白くて丸いので、せっかく、このように説明してくださっても困ってしまうことがあります)なんですけど…」というような場合も大丈夫。顧客カードをレジでスキャンすれば、その方の購入記録をパソコン画面上に出せ、その中から希望される製品を見つけられるので、検索時間を大いに短縮できます。

 

薬局レジ用ソフトによっては、顧客カード経由で入力された薬歴をグラフ化するプログラムがついており、処方間隔に定期性があるか、飲み残しや飲み過ぎの可能性がないかどうかを1目でわかるようにできます。グラフ化機能がなくても、画面に購入記録を出し、医薬品名別に並べかえて、その購入日を追っていくと、処方間隔の定期性をおおまかにチェックすることができます。配合禁忌・相互作用のチェックも即座にできます。顧客カードで得た情報から、カード保持者を年齢層や疾患別にグループ分けし、ターゲットを絞った情報提供やセミナー案内に利用することも可能です。

 

患者さんと薬局をつなぐ顧客カード

お支払いの際には、顧客カードをお持ちか必ず伺い、まだの方にはメリットを簡単に説明して、お勧めします。こちらが訊く前に、「ここの顧客カードを持っています!」と、患者さんが言って下さるのは嬉しいものです。また、患者さんは、カードを提示することで、「ここが私の“行きつけ薬局”です。だからいつもここへ来るのです。」ということを強調でき、それが嬉しく楽しそうです。

 

どの薬局も配布数を増やしたい顧客カードですが、本人の同意なしに個人情報を第三者が保持することは法律で禁止されているので、薬局が処方箋などから入手した個人情報をカード作成に無断で利用し、患者さんに送ることはできません。顧客カード希望者には、申請書に氏名・住所などを記入し、個人情報を薬局で保管する旨同意するサインをしてもらいます。個人情報を出すことに、ドイツ人は非常に敏感です。カードをお勧めする際は、お預かりする個人情報を当薬局外に出さないことを強調するのも忘れません。日本で言う「団塊の世代」にあたる年齢層では、「顧客カードを持ちたくない・必要ない。」と、おっしゃる方が他の年齢層の方より多いように思われます。

 

2016年4月からの新制度に伴い、顧客カードを導入してはいかがでしょう?薬局と患者さんをつなぎ、信頼関係を築くのに一役かってくれるはずです。薬歴管理等が楽になり、業務が効率化される分、その他の業務に時間が割け、入力された個別データを健康サポート業務やより綿密な服薬指導などにつなげることができるのではないでしょうか?

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