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ドイツPTA便り-11

ドイツPTA便り
11
著者
アリーン・フォーゲル
● ドイツPTA便り-11
麻薬依存者に対する医療プログラムSubstitutionsprogramm(代替え薬治療)

 

2016.11.09

 

今回は、麻薬依存患者さんを治療する医療プログラム、Substitutionsprogrammについてご報告いたします。Substitutionと名付けられているとおり、麻薬の代わりになる医療用医薬品を投薬します。目的は、依存患者さんの社会復帰と感染症の予防です。
患者さんがこれまで使用していたヘロインのような麻薬の代わりに治療用として使用が許可されているメサドンやブプレノルフィンが処方されます。治療には医師が短期間ごとに患者さんの指導にあたり、治療の妨げになる医薬品や違法麻薬を併用していないかの検査も行います。この治療費は医療保険でカバーされます。

患者さんの治療状況が安定してくると医師の処方箋に基づき、薬局で代替え薬をもらったり、薬剤師の監視のもとに薬局で必要量を服用したりできます。錠剤の場合は、開口してもらい、確実に服用したか確認します。最長で1週間分持ち帰りができます。これはテイクホームと呼ばれていて、患者さんが休暇に出かけるときは、例外的に4週間までのテイクホームが認められています。

治療を受ける患者さんの中には、毎日医師のところへ通い、医師の監視のもとに1日分を服用する方もいます。その際に必要な医薬品は医師が薬局に処方箋を出して注文します。依頼を受けた薬局では、処方された医薬品を医院へお届けに行きます。ドイツは医薬分業制により、医師は診療用に必要な医薬品を薬局を通して入手しています。メーカーや医薬品卸は、医療用医薬品を直接医院へ渡せない制度になっています。

代替え薬治療を受ける患者さんにも他の患者さんと同様、いきつけ薬局が大切な役割をします。顔見知りだと治療経過を見届けやすいですし、患者さんにとっても、いきつけ薬局で顔見知りのスタッフと気持ちのよい対話をする方が社会復帰への後押しになります。テイクホーム用の代替え薬をお渡ししたり、薬局のプライベートルームで服用してもらったりする際は、他の患者さんやお客様にそれと気づかれないよう、薬局のスタッフは非常に気を遣います。そういった気遣いにより、患者さんは治療を続ける上で、薬局に1人の患者として大切に扱われていると思うことができ、安心感と信頼につながります。

もちろん、法規面でも気をつけないといけないことがあります。ここで扱うのは、麻薬処方箋です。麻薬処方箋を受け取ったら、意識を集中して、必要事項が記載されているか、記載事項に問題がないか何度も確認します。麻薬処方箋は7日間有効です。代替え薬治療では、それを示す、Sの文字、服用期間、1日量、使用法(薬局で服用、もしくはテイクホーム)が明記されているかチェックします。ドイツでは通常箱出し調剤ですが、錠剤の場合は、必要数だけお出しするので例外的にバラ調剤です。錠剤数を間違えないよう、2人のスタッフが確認します。毎回同じ処方量の患者さんには、あらかじめ薬剤師の1人が、準備をしておき、患者さんを薬局でお待たせしないよう、スタッフも慌てて調剤をすることがないようにしています。治療は継続していても、1日量や使用する製剤が時々変わる患者さんもあり、代替え薬治療用の麻薬処方箋を受け取ると特に緊張します。

法定疾病保険加入者用の処方箋はA6サイズで一般処方用はピンク色麻薬処方用は黄色と色分けされています。

 

麻薬処方箋に調剤済みのサインができるのは薬剤師だけです。薬局で扱う麻薬医薬品は、出入量を製品別に管理ファイルに記帳します。毎月末には、麻薬医薬品の在庫量が記帳された数と合っているか確認し、在庫一覧表を作成することが義務づけられています。この管理ファイルと在庫一覧表にサインができるのは、薬局長である薬剤師だけです。

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