メルマガ新着

ドイツ薬局便り-13

ドイツ薬局便り
13
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-13
重要性を増すOTC医薬品の相談販売

 

2016.11.30

 

ドイツの薬局では、レジカウンター後ろの壁一面が薬棚になっており、OTC医薬品が主な適応症(もしくはカテゴリー)ごとに陳列されています。中規模の薬局では、60~80cm幅で薬棚を6~8区分に仕切り、よく買い求められるOTC医薬品を並べます。花粉症治療薬やかぜ薬など季節により必要度の違ってくるものは、それに応じて製品の入れ替えをします。ピッキングマシーンの導入が進む中、デジタルウォールと連動させ、レジカウンターの後ろはOTC医薬品を陳列せず、製品の画像だけを表示している薬局も出てきました。

 

ドイツでは薬局で販売できる医薬品を

 

1)Verschreibungspflichtig:処方箋がないと入手できない医療用医薬品

患者さんから見える薬棚には陳列できない。

 

2)Apothekenpflichtig:レジカウンターで薬局のスタッフに相談して出してもらう、

いわゆるOTC医薬品。

処方箋がなくても購入できるが、患者さんが自由に選べ、手に取れるところに陳列してはいけない。

 

3) Freiverkäuflich:患者さんが自分で選べるところにおいてもよい自由販売薬。

 

に3分類しています。1)と2)の医薬品は、薬局でしか販売できません。レジカウンター後ろの薬棚には、主にこのApothekenpflichtig医薬品が並べられています。

 

 

ドイツのOTC医薬品には主に次の分類があります:

解熱・鎮痛薬

かぜ薬

胃腸薬

抗アレルギー薬

ビタミン剤

目薬

抗不安剤、不眠症薬

皮膚病治療薬、薬用スキンケア

循環器症状(動悸、息切れ、低血圧…)治療薬

など。

薬局では、幅広い領域で、各適応症へ次のように数種類のOTC医薬品を取り揃えて、相談販売を行っています。

 

単一成分か複合成分含有

ハーブ製剤など天然成分か合成成分

ホメオパシー(ドイツではOTC医薬品扱いで、1部要処方箋薬となっています)

同一成分でも複数の剤形(錠剤、発泡錠、シロップ、顆粒、坐薬...)

乳児・小児・妊婦にも使用できる製品

同一成分でもオリジナルメーカーの製品とジェネリック

 

顧客の好みや状況により、いろいろなケースに合わせて出せるようにしています。

 

ここ十年余りで、薬局における相談販売が重要になってきた理由に、2004年の医療保険制度改革の影響があります。ドイツは戦後の経済復興以来、加入者に手厚い保護を与える社会福祉制度を謳歌していました。しかし、医療技術の高度化に伴う医療の高額化、高齢社会などの要因により法定保険医療費は年々増加しており、今後の少子・高齢社会、経済状況も考慮すると医療保険財政は厳しい局面を迎えています。法定医療保険でカバーする薬剤費を抑えるため、1980年代末からいろいろな政策が取られましたが、余り功を奏しませんでした。そこでドイツは2004年に大きな医療保険制度改革を行い、薬剤費節減策の1つとして、それまで法定医療保険でカバーしていたOTC医薬品を18歳以上の成人には全額自己負担としました。これにより、OTC医薬品の処方数は大きく落ちました。治療に必要と思われるものは保険請求用のピンク色から自己負担用の緑色の処方箋に処方されることになりました。当初、この新制度を知らない患者さんは、処方箋の色が変わったことや、突然の全額自己負担に驚き、不満を薬局のスタッフに漏らす方もいました。また、OTC医薬品が処方されても全額自己負担ならいりません・買いませんという患者さんも出てきました。この新制度はメーカーの売り上げにも影響しました。

 

OTC医薬品メーカーには、OTC医薬品専門か、医療用医薬品も製造しているところがあります。ハーブ製剤を専門にしたり、特定の治療領域に絞ったりしているところもあれば、ジェネリックメーカーのように幅広い適応症に対応できる品揃えの会社もあります。2004年以降、各OTC医薬品メーカーは、自社製品をいかに患者さんや薬局に選んでもらうか、考える必要性にせまられ、宣伝や薬局スタッフへの製品教育、薬局へ渡すショーウインドーのデコレーションキットの充実に力を注ぐようになりました。

 

どうせ自己負担なら、直接薬局へ行ってOTC医薬品を購入した方が、予約を取ったり、医院の待合室で長く待ったりする必要もありません。軽い症状なら近くの薬局で必要な薬を購入する。自分が負担するのだから、良い製品をそれなりの価格で購入したい。そういう患者さんが2004以降来増えました。薬局では、まず、患者さんの症状を丁寧にお聞きして、OTC医薬品で自己治療できる症状か判断し、成分、剤形、箱のサイズ(量)、価格など、顧客の症状や希望に合ったものを選び出します。

 

こういった背景から、薬局のスタッフには、OTC医薬品の相談販売能力がさらに問われるようになりました。それに合わせ、レセコンソフトも学術情報、製品検索、製品比較、追加でお勧めできる製品のリストアップなど、機能が年々、多様化、充実化してきており、薬局スタッフを相談販売時にサポートしています。

 

メルマガ新着

TOPIC月別アーカイブ