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ドイツPTA便り-20

ドイツPTA便り
20
著者
アリーン・フォーゲル
● ドイツPTA便り-20
アタマジラミ・アラーム

 

2018.11.22

 

学校や幼稚園で、主に長期の休み明けに流行っていたアタマジラミの寄生は、ここ数年、休み明けだけでなく、突発的に起こるようになりました。ドイツの学校では、秋から新学年が始まります。幼稚園は、夏休み明けの9月から開園となります。この時期は特に、アタマジラミ寄生患者数が増え、薬局では対処用医薬品の販売数が多くなります。

 

新学期が始まると、園児や学童は頭をくっつけるようにして、楽しかった休暇について話すのに夢中になります。これは、アタマジラミが子供から他の子供へ寄生する大チャンスになります。強いかゆみのため、子供が頭を掻きむしるので、アタマジラミの寄生に親や教師たちが気付きます。耳の付近やうなじに生えた頭髪に卵を見つけたり、アタマジラミが動いているのを見つけたりして、保護者が慌てて薬局に駆け込んできます。

 

アタマジラミとその卵を梳くことができる、非常に目の細かい専用の櫛があり、各薬局で購入することができます。しかし、卵は、髪の毛に接着剤でくっつけたように貼り付いているので、髪を梳くだけでは全て取り除くのが難しく、充分な対処はできません。そこで、両方を駆除する製剤が必要になります。駆除製剤は液状で、一定時間、頭髪になじませて使用します。未成年患者には、小児科医や主治医が処方でき、疾病保険が支払う製品もあります。例えば、ジメチコン、天然ピレスロイドのピレトリンや合成ピレスロイドであるペルメトリン含有のアタマジラミ駆除製剤がそれに該当します。これらは、OTC医薬品なので、処方箋がなくても薬局で購入することができます。

 

ドイツ法定疾病保険の適用となる医薬品は、成人では医療用医薬品と1部の例外として適用が認められたOTC医薬品です。その他のOTC医薬品は、成人の場合、たとえ処方されたとしても、全額自己負担となります。12歳未満の未成年への処方では、医療用医薬品であれOTC医薬品であれ、疾病保険が基本的に全額支払います。例外が日本でFixプライスとよばれている償還限度価格を超えた医療用医薬品で、差額は患者さんもしくは保護者の負担となります。12歳から18歳未満の患者さんの場合、医師の判断でOTC医薬品を処方できます。医師が処方したときのみ法定疾病保険が支払うことになっています。成人に医療用医薬品が処方された場合、箱だし調剤のドイツでは、1パックごとに患者さんが自己負担料を支払います。通常、1パック当たり最低5ユーロから最高10ユーロとなっています。

 

ジメチコンは、アタマジラミの気道や卵の気孔を塞ぎ、双方を窒息させます。ジメチコンとドデカノールの合剤もあります。ドデカノールはアタマジラミの表皮にダメージを与えます。ピレトリンやペルメトリンは神経毒として作用します。ペルメトリンは、医療用医薬品である疥癬駆除製剤には5%の濃度で含まれています。液剤ではなく、クリーム製剤になっています。アタマジラミ駆除剤でのペルメトリン含有濃度は、約0.5%です。アタマジラミ駆除に、日本では合成ピレスロイド成分、フェノトリンが主に使用されているようです。ドイツでは、同成分を含む製剤は販売されていません。

 

製品や成分によって、使用法と作用時間が違うので、薬局では丁寧な説明が大切です。乾いた頭髪に液剤をなじませるか、先に洗髪し、タオルで水分をふき取ってから使用するか。作用時間中は、シャワーキャップやタオルを頭にかぶせてもよいかどうか。作用時間は短い製品で10~20分、長い製品では数時間などと様々です。使用法を誤ると駆除効果が出ません。特に卵は死滅しにくいので、駆除剤を適正使用しないと、後日、孵化した小さなアタマジラミが見つかり、保護者が再び大慌てすることになります。8~10日後、再度、駆除剤を使用することが、ロベルト・コッホ研究所(ドイツ連邦感染症研究所)により勧められています。

 

Medizinprodukt(日本語に訳すのが難しいのですが、製品の性質や効用からすると、医薬品と医薬部外品の中間と言ったらいいでしょうか)として販売されているニーム・エキス含有の製剤は、作用時間が10分なので、お子さんや保護者の負担が少なくて済みます。製法により、ニーム・オイルより有効成分が多く含有されています。

 

寄生拡大予防に、患者さんが使用したタオルや布団・枕カバーを煮沸洗濯したり(ドイツの洗濯機には、水温90度で洗えるプログラムがついているのが一般です)、お気に入りでお供のぬいぐるみを2週間プラスチック袋に入れてベランダなどに放置したりします。ぬいぐるみに付着しているかもしれないアタマジラミや卵を隔離し、餓死させる目的です。

 

アタマジラミの寄生理由は、衛生管理や生活環境とは特に関わりはないようです。成人より子供に寄生するケースが多いようです。

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