花粉症患者さんへの対応
当薬局の店長は日本人。薬局前の3本の桜がやっと咲き始めたと大喜びしています。内陸性気候のドイツも少しずつ春らしくなってきました。その年のお天気具合によりますが、ドイツでは、2月初旬から6月末までが花粉症シーズンで、目のかゆみ・充血、涙目、鼻水・鼻づまりなど、花粉症に特有の症状を訴えてくる患者さんが増えます。今回は、花粉症患者さんへの対応についてお話しいたします。
患者さんの多くは、去年やこれまでの経験から「花粉症かな ?」と思い、症状軽減・改善のため薬局を訪れます。薬局のスタッフは、患者さんができることをいろいろ説明いたします。よく使用される抗アレルギー剤は、特許期限が切れ、スイッチOTC医薬品になったものがほとんどで、これらが処方されても、大人への保険償還はありません。
ドイツでは、2004年に大きな医療制度改革があり、薬局の業務内容も変わりました。大人へのOTC医薬品償還外しにより、OTC医薬品の相談販売が薬局の大切な業務の1つとなりました。以来、相談販売の質向上のため、メーカーや薬剤師会が積極的にセミナーを開いています。相談販売トレーナー派遣の申し出がメーカーからあったら、局内で、できるだけ時間を取って来ていただきます。製品・成分の特徴など学術的なことだけでなく、上手なアドバイスの仕方などマーケティング面でも学べます。薬局で短時間、しかも営業時間内に勉強会をしてもらえるのは、薬局スタッフにとって大変有難いことです(閉店時間後は、スタッフは皆、できるだけ早く帰宅したい...)。
アレルギー症状を効果的に抑えるため、まずお勧めするのはH1受容体拮抗剤のセチリジンかロラタジン製剤です。OTC医薬品で、主に使用される錠剤には7、14、20、50、100錠入りサイズがあります。小児科領域でよく使われるジメチンデンには、水剤(主に小児用)、錠剤、徐放剤の剤形があり、お買い求めになる患者さんには、服用後の眠気に注意するようお話しいたします。
「内服剤よりは...」という患者さんには、局所作用の点眼薬、点鼻薬も選択肢としてあることをお伝えします。例えばレボカバスチン、アゼラスチン含有の製剤です。同両成分には、点鼻薬と点眼薬がセット入りの「コンビパック」と呼ばれる箱があり、それぞれ単独で購入するよりもセット価格の方が割安になっています。ケトチフェン製剤は、去年スイッチOTC医薬品となりましたが、点眼剤がメインです。
症状の軽い場合や、合成成分含有の医薬品を使用したくないという方には、ホメオパシー医薬品という選択もあります。Luffa operculata、 Thryallis glauca、 Cardiospermum halicacabumの入った錠剤、Luffa operculata含有の点鼻薬、Euphrasia含有の点眼薬を症状緩和にお勧めできます。
「鼻洗浄」は、花粉を洗い出し、さっぱり感を得られるため、合わせてお勧めしています。専門の洗浄器と1包化されたソルトミックスのセットパックがあり、ソルトミックスだけ別売りのものを買い足すことができます。塩分濃度が作用に影響しますので、用途専用ソルトを指示された用量の水で薄めることを説明します。外出先から帰宅したら着替え、寝室に脱衣したものを持ち込まない、帰宅後シャワーを浴び洗髪するなどのアドバイスも加えます。多くの患者さんは、このような症状緩和につながるちょっとしたアドバイスに喜び、感謝してくださいます。
今年初めて花粉症になった患者さんもいらっしゃいます。そういった患者さんの中には、花粉症かもしれないとは思はず、α受容体作動薬の点鼻剤や点眼薬を求められることがあり、原因がカゼか花粉症かお聞きして、その症状の度合いから適切と思われるものをお勧めしています。症状が改善されなかったり、さらにひどくなる場合、呼吸具合にいつもと違うものを感じられる患者さんには、できるだけ早い医師の受診を促します。
軽い症状の場合は、予約や待ち時間のいらない薬局へまず行って相談という方が多いので、症状を詳しく伺い適切なアドバイスと製品をお勧めする薬局の仕事は大変重要です。早く症状が良くなってくだされば、正しく製品を使ってくださればいいなと思いながら応対しています。
日本の皆様へ、ドイツより心からご挨拶いたします。