保険薬剤師による先確認
今回の改定の大きなポイントは、薬剤服用歴管理指導料の算定要件に
「エからセまでの事項(後述)については、処方箋の受付後、薬を取りそろえる前に、保険薬剤師が患者等に確認すること」
と、「保険薬剤師」による先確認が盛り込まれたことです。
2014年調剤報酬改定時の厚生労働省の説明資料の中に、「服薬状況等の確認のタイミングの明確化」がありました。医師は患者の問診等を通じて、最後に診断を行い、治療方法を決める。薬剤師も患者の問診等(服薬状況、残薬の状況、後発品の意向確認)を通じて、最後に処方箋の内容の通り調剤してよいか判断することが必要である。医師の「病状の診断」に対して、薬剤師の「調剤の判断」という言葉が使われています。
時間を遡れば、薬剤師の先確認は、
2010年の調剤報酬改定時に、「処方箋の受付後、薬を取りそろえる前に、確認するよう努めること」という表現、いわゆる努力義務として盛り込まれました。
2011年、第13改訂調剤指針にて、新しい「調剤の実践の概念図」が示されました。処方箋受付、患者からの情報収集、薬歴の確認、お薬手帳の確認、処方監査、調剤内容の確認、調剤設計までを行い調剤決定。これを受付(対人業務)と言い、その後薬剤調製を行うとなっています。
6年制薬学部の4年次のOSCEの薬局窓口での情報収集は、「処方箋受け付けから情報収集して今から調剤します」までが課題となっていて、既に薬学教育は先確認です。
調剤指針が変更されてもなかなか現場での先確認は進みませんでしたが、
2014年の調剤報酬改定にて、服薬状況等の確認のタイミングが明確化され、努力規定から「確認すること」という義務規定に変更されました。
この2年間、先確認にトライする薬局が増えてきました。また、先確認に対応する電子薬歴もあります。ネオフィスト研究所の研修では努力義務の時から、先確認のロールプレイを行い、トリニティ通信添削講座という薬剤師の窓口会話文をSOAP薬歴に記載する添削課題でも会話文は先確認としてきました。
そして、2016年の調剤報酬改定にて、先確認は事務員が行うのではなく、「保険薬剤師が」と明文化されました。今回の改定は「対物業務から対人業務への移行」がキーワードのひとつです。薬剤師によるフロント業務の充実が求められています。4月1日から処方箋受け取り時にたくさんのことを確認して、調剤判断をしていかなければなりません。
・4月1日より一般名処方が増えるかもしれません。後発医薬品の変更が必要です。
・後発医薬品の銘柄を記載した上で変更不可となっていれば、理由が必要ですので、そ
れを確認します。
・新しい処方箋様式で「□保険医療機関への情報」にレ点がついていて、患者さんに残
薬があれば、処方日数を変更できます。
・湿布薬が70枚以上処方されていたら、これも理由が必要ですので確認します。また1
日分の用量又は何日分に相当するか書いてあるか確認します。
・お薬手帳を見て、かかりつけ薬剤師がいるのかどうか確認します。
・かかりつけ薬剤師として服薬の一元管理・継続管理をしたほうがよい患者さんであれ
ば、かかりつけ薬剤師の説明をして同意書に署名をもらいます。
それから、薬剤服用歴管理指導料の算定要件である、エからセまでのことを確認します。
エ 患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の情報
オ 患者又はその家族等からの相談事項の要点
カ 服薬状況
キ 残薬の状況
ク 患者の服薬中の体調の変化
ケ 併用薬等(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及びいわゆる健康食品を含む。)
の情報
コ 合併症を含む既往歴に関する情報
サ 他科受診の有無
シ 副作用が疑われる症状の有無
ス 飲食物(現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているものに限る。)
の摂取状況等
セ 後発医薬品の使用に関する患者の意向
エの項目ですが、これまでの「患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の患者についての情報の記録」という表現から、記録という言葉が削除されました。これは基本情報、いわゆる表書きで管理する項目ではなく、毎回確認しなければならない項目となったことを意味します。それからケの項目に要指導医薬品が追加されています。
ここまでのことを確認して、疑義が生じたら疑義照会します。重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件も増えています。そしてやっと調剤確定、薬剤調製開始です。
2014年「服薬状況等の確認のタイミングの明確化」の時に、それは「薬剤師の見える化」でもあると言われました。今回の調剤報酬改定のキーワードとして「患者本位の医薬分業の実現」もあげられています。
無理ではなく、どうしたらできるかを考え、全部はできなくても1部からなど対応策を考えてください。
また、薬剤服用歴の記録は指導後速やかに完了させるという文言も追加されました。
これも肝に銘じて。