フルオロキノロン系薬の適正使用を
2016年5月27日、G7伊勢志摩サミットが閉会しました。そのなかで、『国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン』が採択され、抗菌薬と薬剤耐性(AMR:antimicrobial resistance)の問題について各国が協調して取り組むことがコミットされました。具体的には、抗菌薬の有効性の温存として、「抗菌薬の有効性を国際公共財として認識し、その有効性を保持することの優先(情報共有、規制面の連携促進、意識の向上、国際協力の推進等)」。「合理的使用とともに、安全かつ効果的で品質が保証された抗菌薬のアクセスの確保」。「市場の失敗への対処等を、G20を含めた国際社会と共有すること」が明記されました。これに先立ち、厚生労働省は『薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン』を策定し、2020年までに、「抗菌薬の使用量を3分の2に減少させる」「経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の使用量を50%削減する」「大腸菌のフルオロキノロン耐性率を25%以下に低下させる」などの目標を定めました。
ところで、PK-PD理論に基づく抗菌薬の投与法として、濃度依存型(Cmax/MIC)のアミノグリコシド系薬やフルオロキノロン系薬は、ピーク濃度をなるべく高くするため、1回投与量を増やすことが推奨されています。それを元に1日1回投与のクラビット錠500㎎(レボフロキサシン水和物)、ジェニナック錠(メシル酸ガレノキサシン水和物)、アベロックス錠(モキシフロキサシン塩酸塩)が開発されました。しかしながら、それ以前に発売されたオゼックス錠(トスフロキサシントシル酸塩水和物)やバクシダール錠(ノルフロキサシン)などは、いまだに1日2~4回投与という承認時の用法・用量のままです。欧米では認められているが、国内では未承認の適応等について、医療上の必要性を評価する「公知申請」という制度がありますが、これらの手法を使って、フルオロキノロン系薬の用法・用量を早急に見直すべきではないでしょうか。
by 蔵之介