●JACP医薬品情報室だより 26
慢性便秘症治療薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬(グーフィス錠)
2018.07.06
2018年4月、胆汁酸トランスポーター阻害薬のグーフィス錠(一般名:エロビキシバット水和物)が発売されました。適応症は、慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)で、世界初の胆汁酸トランスポーター阻害薬になります。
便秘治療薬には、膨張性下剤(カルメロースナトリウムほか)、浸潤性下剤(カサンスラノール・ジオクチルソジウムスルホサクシネートほか)、大腸刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートナトリウム水和物ほか)、塩類下剤(酸化マグネシウム)および上皮機能変容薬(ルビプロストン)などがあります。しかし、酸化マグネシウムは高齢者では高マグネシウム血症のリスクのため慎重投与、刺激性下剤は長期連用による耐性または習慣性の問題、ルビプロストンには悪心などが高頻度で発現する等の課題があります。
胆汁酸は、脂肪の吸収に必要な物質で、肝臓で生合成され、胆嚢から十二指腸へ分泌されます。分泌された胆汁酸の約95%は胆汁酸トランスポーター(ileal bile acid transporter:IBAT)により再吸収され、再び肝臓で再利用される、いわゆる腸肝循環が行われています。再吸収されなかった胆汁酸は、大腸内で水分を分泌させ、消化管運動を促進します。
グーフィス錠は、回腸末端部にある胆汁酸トランスポーターを阻害することで、胆汁酸の再吸収を抑制し、大腸内の胆汁酸量を増加させます。その結果、大腸内の水分および電解質分泌が促進され、さらに消化管運動が亢進されることにより便秘が改善されます。食事により胆汁酸が分泌される前に服用することが望ましいため、食前投与になります。上皮細胞に直接作用し、ほとんど吸収はされません。高脂血症改善薬の探索において見出された化合物を基に開発された薬なので、コレステロールを低下させる作用もあります。また、主な副作用は、軽度の腹痛と下痢です。既存の便秘治療薬とは異なる作用機序のため、新たな選択肢として期待されています。
使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。