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JACP医薬品情報室-46

JACP医薬品情報室
46
著者
蔵之介
● 医薬品情報室だより-46
コロナ対策室

 

2020.05.01

 

『新型コロナウイルス感染症』に関する蔵之介の個人的なメモです。JACPの公式見解ではありません。また、記述は2020年4月時点での情報です。
 
 
 
・2019年12月、中華人民共和国・湖北省武漢市で原因不明の肺炎が発生
病名:COVID-19(coronavirus disease 2019:コヴィッド・ナインティーン
ウイルス名SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:サーズコロナウイルス・ツー)。SARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス(SARS-CoV-1)の近縁ウイルス。中東呼吸器症候群はMERS-CoV
・コロナウイルスは、風邪ウイルス4種類と、動物から感染した重症肺炎ウイルス2種類(宿主がコウモリのSARSとヒトコブラクダのMERS)がある
・WHO(世界保健機関)は2020年3月パンデミック(世界的大流行)を宣言
・ウイルスは生物と無生物の中間、脂質二重膜(エンベロープ)で包まれた核酸
核酸はRNAかDNAのどちらか一つ、ウイルスは細胞質や細胞壁を持たない
(抗菌薬は効かない!ただし、コロナとプレボテラ細菌の複合感染説もある)
・新型コロナウイルスは、インフルエンザと同じRNAウイルス
RNAウイルスは一本鎖で壊れやすく、増殖スピードが速い≒変異しやすい
(DNAウイルスは二本鎖で壊れ難い。増殖スピードは遅い)
・ウイルスは動物細胞内でのみ増殖可能で、環境下では増殖できない
飛沫汚染された手指を介して、眼、口、鼻の粘膜から人の体内に侵入する
脂質二重膜(エンベロープ)を破壊すればウイルスを不活性化(消毒)できる
・エンベロープを持つウイルスは、消毒薬抵抗性が低く、胃酸でも破壊される
(エンベロープがないノロウイルスは、消毒薬抵抗性が高く、エタノール無効)
 
<ウイルスの感染力保持期間
低温・暗所では長く感染力を保持する ただし、高温多湿でも集団感染発生
   (4度で14日間、22度で7日間、37度で2日間、70度5分間)
・室温(22度、湿度約65%)の条件下で
    コピー用紙 30分エアロゾル(飛沫核)3時間、銅板4時間
    厚紙、段ボール、木材 1日
    布地、金属、紙幣 2日
    ステンレス、プラスチック、ガラス 4日     ←スマホ
    医療用マスク 7日
・サージカルマスクの表面で7日間感染力保持、ただしエタノールで瞬殺可能
・「空気感染」は否定的、「エアロゾル感染」「飛沫感染」「接触感染」が感染経路
    空気感染:麻疹、水痘、結核
    飛沫感染:劇場、満員電車、ナイトクラブ、ライブハウスなど
    接触感染:電車のつり革、ドアノブ、エレベーターのボタン
3密(密閉、密集、密接)を避ける
    換気が悪い空間(密閉空間)         ←換気
    人が密集している(密集場所)        ←人数を減らす
    近距離で会話や発声が行われる(密接場所)  ←社会的距離
くしゃみで4万個、5分間の会話で3千個の飛沫や飛沫核が飛散
・くしゃみで飛沫は2メートル以内、飛沫核は最大8メートルまで浮遊
濃厚接触者の定義「2日前まで、1m以内マスクなし、15分以上の会話」
・ウイルスが付着した服などを振ってはいけない。ウイルスが再浮遊する
・トイレのジェット・ドライヤーは、ウイルスを大量に拡散する(危険!
 
 
飛沫感染  社会的距離の確保  朝礼、談話室、更衣室等も注意
ソーシャル・ディスタンシング(social distancing) 目安は2メートル
 (社会学用語のソーシャル・ディスタンスは、個人やグループを排除する意味)
2メートル離れた場合、飛沫感染のリスクが大幅に減少する
    ソーシャル・ディスタンシング > 換気、手洗い >> マスク
・薬局に入る患者数を制限、透明なアクリル板やビニール・カーテンを設置
換気回数は、少なくとも1時間に2回以上、数分間程度、窓を全開する
    2003年ベトナム・ハノイ、病院の窓を開け放ち、SARSを終息させた
2方向の窓を同時に開け、窓が1つの場合はドアを開け、換気を励行する
・不要不急の外出は避け、家にいる(stay home)、群れない、離れる
紫外線は、ウイルスの膜タンパク質を変性できる
   〔中東呼吸器症候群(MERS)は、45度のアラビア半島でも感染拡大した〕
・ニューヨークの感染拡大、運行数減少による地下鉄の混雑が要因との分析あり
 
接触感染
複数の人が頻繁に触れる環境表面(ドアノブ、トイレ、キーボード、マウス、エレベーターのボタン、紙幣など)、ほかにもスマホ、財布、バッグ、靴底
・利き手の人差し指は使わない、支払いはカード、薬局内の患者向け雑誌は撤去
・ウイルスは、健康な肌(皮膚バリア)を通り抜けることはできない
・使い捨て手袋も、その都度、捨てなければ無意味
 
石鹸と水道水による手洗い
石鹸(界面活性剤)を泡立てて、20秒以上擦れば、脂質二重膜を破壊できる
温度25度以上で脂質は溶けやすく、石鹸は泡立ちやすい(飲むのは無意味)
・石鹸で、もみ洗いを10秒間した後、流水で15秒間流す、2回繰り返す
    手のひら・手の甲指先爪の間指の間親指手首
    ペーパータオルまたは清潔なタオルで水気を拭き取る
・入念で頻繁な手洗いとハンドクリームによる手指の保湿が重要
手洗いをする前に、汚染された手で眼、鼻、口の粘膜を触らない
・乾燥により生じる肌の小さなひび割れにウイルスが潜む、爪も短く切る
手洗い後の、水道の蛇口、化粧室のドアノブ、ヘアスタイリングで効果ゼロに
 
エタノールによる手指消毒
65%以上のエタノールは、脂質二重膜を破壊できる。30%では効果なし
    (50%以上の濃度であれば、接触時間 1 分以内にウイルスを不活性化)
 手を軽く丸めてエタノールを手のひらに溜める(十分な量:1~3mL)
     指先や爪の間手のひら手の甲指の間親指手首
 
個人用防御具  PPE:Personal protective equipment
         パーソナル・プロテクティブ・イクイップメント
・N95マスク、ゴーグル、フェイスシールド、ガウン、エプロン、手袋など
・眼鏡はゴーグルの代替にはならない。必要があれば、ゴーグルを着用する
 
マスク   布マスクの網目の大きさ      10~100μm
      スギ花粉               20μm
      感染者の咳やくしゃみによる飛沫核   5μm
      ウイルス                 0.1μm
飛沫核(エアロゾル)とは、飛沫が水分を失って空気中を漂う粒子のこと
・マスクはウイルスを含む飛沫を撒き散らすことを防ぐ効果はある(感染者
感染者サージカルマスクを着用すべき(周囲の人への感染を防ぐ)
・マスク(N95以外)着用による感染防御効果は期待できない
   N95マスク ≧ サージカルマスク(不織布製) >> 布マスク
感染者と接触がある医療従事者は、密着度の高いN95マスクを着用する
・N95は、空気感染(麻疹、水痘、結核)防御用の高機能マスク
・N95はエタノール消毒によりサージカルマスク以下に性能が劣化する
・過酸化水素水プラズマ滅菌器等で再利用可(厚労省事務連絡4月10日)
・サージカルマスクは、密着度が高くない
布マスクでも、顔(特に眼、口、鼻)を触れない効果はある(未感染者)
 (米国はマスクを推奨しなかったが、布マスクでも着用すべきに方向転換)
・マスクは吸気の湿度を保ち、気道粘膜の乾燥を防ぎ、繊毛運動には有用
マスクの正しい使用法
   ① 着ける前に手を洗う
   ② 上下、裏表を確認する
   ③ マスクと顔の間を密着する(ノーズピースを鼻の形に合わる)
   ④ プリーツ(ひだ)を上下に伸ばす(鼻や顎を覆う)
   ⑤ 着用後は、マスクの表面に触れない
   ⑥ マスクを下げない(顎に飛沫が付着していることがある)
   ⑦ マスクはひもをつまんで、耳のあたりで外す
   ⑧ 外した後は手洗い・手指消毒
 
 
 以下の仮説は、現時点では否定も肯定も、推奨もされていません。専門家の査読を経て、確立されたエビデンスは、まだどこにもありません。情報は日々刻々と更新されており、この内容が正しいとは限りません。
 
新型コロナ患者にACE阻害薬やARBは有害か?
・中国のデータ(約45,000人)で、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高血圧、がんなどの基礎疾患を持つ患者の死亡率が高かった
・新型コロナウイルスは、肺や腎臓などの上皮細胞に発現しているアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して細胞内に侵入する
・スパイク(突起)は、インフルエンザの突起であるヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)とは別物である
動物実験で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)がACE2の発現を増加した→発症しやすくなる?
・別の動物実験では、ARB、ACE阻害薬が、COVID-19ではないが、ウイルス性肺炎による肺のダメージを抑制した
・欧州高血圧学会(ESH)、国際高血圧学会(ISH)は、「COVID-19を発症した患者がACE阻害薬またはARBの使用を中止すべきであることを示した臨床的、または科学的なデータは現時点では全くないことから、患者はこれらの薬剤の使用を継続する必要がある」と声明した
・米国心臓協会(AHA)、米国心臓病学会(ACC)、米国心不全学会(HFSA)も同じ
ACE阻害薬やARBを中止することを支持するエビデンスは存在しない
・チアゾリジン系糖尿病治療薬、イブプロフェンにも同様の報告があるが、いずれも動物実験での報告。参考までに薬の開発では、基礎研究(動物実験)から臨床応用まで進む確率は1万分の1、臨床試験からでも3%程度の話である
 
BCGワクチンは新型コロナを予防するは本当か?
・BCGを定期接種している国では、新型コロナ感染者と死亡者が少ない?
   一度もBCGの義務化なし:アメリカイタリア、カナダ、オランダ
   BCG義務化を止めた国:ポルトガル、ギリシャを除く欧州各国
         (イギリススペイン、ドイツ、フランス、イラン、豪州)
   接種国:アジア、アフリカ、東欧諸国
   接種国(日本株):日本、イラク、タイ、台湾
    接種国(旧ソ連株):ロシア、中国、トルコ、東欧
   接種国(デンマーク株):ポルトガル
   接種国(ブラジル株):中南米        は死者が1万人以上の国
・イラクとイラン、スペインとポルトガル、旧西ドイツと東ドイツを比較すると明らかな差がみられる
日本では1951年にBCGワクチン接種が開始された。時代により異なり、1951年以前(70歳以上)は接種されていない。
 1951年~1967年はツベルクリン反応陰性のみ接種。1974年から定期接種化された
・結核を予防するためのワクチンで、フランス語でカルメットとゲランの菌(Bacille de Calmette et Guérin)の略、開発者の頭文字
・BCG接種によって、免疫系の細胞である「単球」にエピジェネティックな変化が生じ、遺伝子のスイッチの入り方が変わるという説がある
・日本ワクチン学会は、「成人や高齢者を対象としたBCGワクチン接種の知見は十分ではなく
 「結核菌の既罹患者」「BCG菌に対する免疫を有する者」に接種した場合、
 強い接種局所反応などの副反応が出現する可能性がある」という見解を発表した
ゼロ歳児のBCGワクチンに供給問題が生じないようにする必要がある
・ドイツ、オランダ、オーストラリアでBCGの臨床試験が開始された
 確かに相関関係はありそうですが、だからといって因果関係の証明にはなりません。
 例えば、かき氷の売上と水死者の数、肺がんとライターの売上、ノーベル賞受賞者数とチョコレート消費量などには相関関係があります。
 「疑似相関」といわれ、因果関係はありません。結論としては「分からない」ということになりますが、
 成人が副反応のリスクを負ってまで接種する意味はありません
 
新型コロナウイルス感染症にイブプロフェンは避けるべきか?
・フランスのヴェラン保健大臣がツイッターで抗炎症薬(イブプロフェン、コルチゾンなど)を服用することは、感染を悪化させる可能性があるので、発熱の場合にはパラセタモールを服用と発言した
・イブプロフェンがACE2を増やし、新型コロナウイルスの感染が増強されるのではないかという仮説がある
新型コロナウイルスとイブプロフェンに関する研究は現時点ではない
・一般的な感染症でいえば、NSAIDsには有害な報告が多い
・日本の一般名(JAN)はアセトアミノフェンであるが、国際一般名(INN)はパラセタモール、商品名はタイレノール
・英国臨床評価機構(NICE)は方針を転換して、発熱や頭痛といったCOVID-19様症状にパラセタモール、イブプロフェンを使用しても良いとした
 
■原著を待っていては手遅れになります。翻訳機能を駆使してプレプリント(査読前の論文)・サーバーに挑戦してみましょう!

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