パーキンソン病治療薬(エクフィナ錠)
2019年11月、パーキンソン病治療薬のエクフィナ錠(一般名:サフィナミドメシル酸塩)が発売されました。エフピー錠(一般名:セレギリン塩酸塩)、アジレクト錠(一般名:ラサギリンメシル酸塩)に続く3番目の選択的MAO−B阻害薬で、非ドパミン作動性作用を併せ持つ新たなパーキンソン病治療薬です。
パーキンソン病(PD)は、黒質緻密層の神経細胞の変性脱落により線条体のドパミン量が低下し、静止時振戦、動作緩慢(無動)、筋固縮、姿勢保持障害などの運動障害を主症状とする緩徐進行性の神経変性疾患です。パーキンソン病治療薬には、①レボドパ(L-ドパ)含有製剤、②ドパミンアゴニスト、➂選択的MAO-B阻害薬、④COMT阻害薬、⑤ドパミン代謝賦活薬、⑥アデノシンA2A受容体拮抗薬、⑦ドパミン遊離促進薬、⑧抗コリン薬、⑨ノルアドレナリン前駆物質などがあります。
MAO-B阻害薬は、ドパミンの分解酵素であるMAO-B (モノアミン酸化酵素-B)を阻害し、脳内ドパミン濃度を高めます。また、レボドパ含有製剤との併用で、L-ドパが効いている時間(オン時間)が短くなり、次の服用前に症状が悪化するウェアリングオフ現象を軽減します。PDの早期治療における単独療法や進行期のレボドパ含有製剤との併用療法に用いられます。アジレクトとエクフィナは、エフピーとは異なりアンフェタミン骨格を有さないので、覚醒剤原料の規制を受けません。直接比較したデータはありませんが、アンフェタミン骨格による不眠症、異常な夢、心臓障害及び神経障害などのリスクが少ないと思われます。エクフィナ®は、既存MAO-B阻害薬と化学構造がまったく異なり、抗てんかん薬のラコサミドに似た構造を有します。可逆的なMAO-B阻害作用(既存薬は非可逆的)に加えて、PDの病態に深く関与するグルタミン酸の放出抑制作用(非ドパミン作動性作用)を持つので、運動症状だけでなく、精神症状や感覚症状などの非運動症状の改善が期待されます。MAO−B阻害薬の変更や中止後に三環系抗うつ薬などを開始する場合には、高血圧クリーゼやセロトニン症候群などの重篤なリスクを避けるため、少なくとも14日間の間隔を空ける必要があります。