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JACP医薬品情報室-55

JACP医薬品情報室
55
著者
蔵之介
● 医薬品情報室だより-55
抗HIV薬(ビクタルビ錠)
2021.04.20

 

2019年4月、抗 HIV(Human Immunodeficiency Virus)薬のビクタルビ配合錠(一般名:ビクテグラビルナトリウム/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩)が発売されました。
RNAウイルスであるHIVは、❶レセプター(CCR5など)を介して宿主細胞内に侵入、❷逆転写酵素によりRNAからDNAに逆転写、❸インテグラーゼにより宿主DNAに組み込まれて増殖、❹最後に、プロテアーゼで切断されて、出芽します。これらの酵素はすべてHIV自身に由来する酵素なので、阻害しても正常細胞には影響を及ぼしません。抗 HIV 薬には、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻害薬(CCR5受容体拮抗)があります。
HIV 感染症に対する治療法は、単独の薬剤で治療すると急速に薬剤耐性を獲得するため、作用点が異なる薬剤を3~4剤組合わせる抗レトロウイルス療法(ART:anti-retroviral therapy)が標準です。抗HIV治療ガイドラインでは、初期のARTとしてHIVを抑制する効果が強力な薬剤〔インテグラーゼ阻害薬、少量のリトナビル、もしくは薬物動態学的増強因子(ブースター)のコビシスタットを併用したプロテアーゼ阻害薬、非核酸系逆転写酵素阻害薬〕から1剤を「キードラッグ」とし、それを補足してウイルス抑制効果を高める核酸系逆転写酵素阻害薬2剤を「バックボーン」と称して併用します。そのほか、長期投与に伴う副作用や医療費の軽減目的で2剤併用療法もあります。
ビクタルビは、ブースターを必要としない新規インテグラーゼ阻害薬のビクテグラビルと、既存の核酸系逆転写酵素阻害薬のエムトリシタビンおよびテノホビル アラフェナミドの配合薬です。食事と関係なく服用でき、錠剤も小さいです。ビクテグラビルおよびテノホビル アラフェナミドはCYP3A、P糖タンパクの基質となるため、これを誘導する作用のある薬剤との相互作用があります。また、1剤で治療が完結するため、ほかの抗HIV薬とは併用できません。

 

 

 
 

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