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JACP医薬品情報室-57

JACP医薬品情報室
57
著者
蔵之介
● 医薬品情報室だより-57
フルオロキノロン系抗菌薬(ラスビック錠)

 

2021.05.06

 

2020年1月、ラスビック錠(一般名:ラスクフロキサシン塩酸塩)が発売されました。グレースビット錠・細粒(一般名:シタフロキサシン水和物)以来、12年振りのフルオロキノロン系抗菌薬(キノロン系薬)の新薬です。
キノロン系薬は、グラム陽性菌(肺炎球菌)からグラム陰性菌(インフルエンザ菌)、非定型病原体(肺炎マイコプラズマ)まで広い抗菌スペクトルを有し、呼吸器から尿路まで全身の感染症に処方されています。反面、汎用に伴う薬剤耐性(AMR)や安全面の課題も懸念されます。今回のラスビック錠は、呼吸器および耳鼻咽喉科感染症に特化したレスピラトリー(呼吸器)キノロンです。キノロン耐性大腸菌が増加している泌尿器科領域の適応はありません。肺組織への移行性が良好で、in vitroで肺胞上皮被覆液に存在するリン脂質(ホスファチジルセリン)と結合性が高いことが確認されています。市中肺炎の主な原因菌である肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、また、近年、呼吸器感染症の原因菌として注目されている口腔内菌、嫌気性菌にも有効です。市中肺炎を対象とした第Ⅲ相二重盲検比較試験ではクラビット錠500mg(一般名:レボフロキサシン水和物)に対しラスビック錠75mgの低用量で非劣性を示しました。ただし、『JAID/JSC 感染症治療ガイドライン』では、キノロン系薬はβラクタム薬が使えない場合の第二選択という位置付けになっています。
キノロン系薬の作用機序は、細菌のDNA複製に必要なDNAジャイレース(DNAをねじるスーパーコイリング)とトポイソメレースIV(DNA を切断するデカテネーション)を阻害します。既存のキノロン系薬は、どちらか片方の酵素活性を強く阻害するのに対し、ラスビック錠は、両方を同程度に阻害するため、最小発育阻止濃度(MIC)の上昇が起こりにくいとされます。多くのキノロン系薬は腎排泄型で、腎機能障害時に用量調節が必要になります。ラスビック錠は、肝・胆汁排泄型なので、腎機能障害時でも用量調節の必要はありません。主にCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を誘導するリファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピンなどは併用注意です。主な副作用は、下痢、好酸球数増加などです。直径7.8mm、厚さ3.8mmと小型のため高齢者でも飲みやすい錠剤です。

 

 

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