乱用防止オピオイド製剤(オキシコンチンTR錠&オキシコドン徐放錠NX)
2017年12月、オキシコンチンTR錠(一般名:オキシコドン塩酸塩水和物)、2019年9月、オキシコドン徐放錠NX「第一三共」(一般名:オキシコドン塩酸塩水和物)が発売されました。麻薬の乱用防止を目的とした持続性癌がん痛治療薬です。
米国では、錠剤をハンマーで砕き、その粉末を水に溶解して注射するなど、麻薬の乱用が深刻な社会問題になっています。2015年、米国食品医薬品局(FDA)は、①物理的抵抗性の付与、②化学的抵抗性の付与、➂有効成分に対する拮抗成分の配合など、乱用防止製剤に関するガイダンスを公表しました。
オキシコンチンTR錠は、改変防止を目的として、錠剤の強度を高め容易に砕けない硬度と、ポリエチレンオキシドを添加し水を含むとゲル状になる特性を付加しました。既存のオキシコンチン錠(販売中止)との生物学的同等性は、空腹時投与では認められていますが、食事の影響を受け、食後投与においては血中濃度が上昇します。また、徐放性マトリックス構造により徐放化したオキシコンチン®錠は、糞便中に抜け殻が排泄されることがありました。オキシコンチンTR錠は、徐放機構をポリエチレンオキシドに変更したのでゴーストピルは生じません。ただし、水を含むとゲル化するため、舐めたり、濡らしたりせず、口に入れた後は速やかに十分な量の水で服用するよう指導する必要があります。TRは、Time Release(徐放)の略です。
オキシコドン徐放錠NXは、乱用防止目的で麻薬拮抗薬のナロキソンを添加しました。経口投与した場合、ナロキソンは肝初回通過効果により速やかに代謝されます。拮抗作用は発現せず、鎮痛効果には影響を及ぼしません。ところが、錠剤を溶かして注射した場合は、ナロキソンが代謝されずに、オキシコドンの薬理作用を打ち消します。消化管全域で溶解する水溶性高分子と腸溶性高分子を組合わせたGWATab(ジワッタブ)技術により徐放化されています。オキシコドン徐放錠NXは、オキシコンチンTR錠の後発品になります。NXは、Naloxoneの略です。