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ドイツ薬局便り-18

ドイツ薬局便り
18
著者
アッセンハイマー慶子
● ドイツ薬局便り-18
セントラル薬局20周年

 

2017.12.01

 

今年9月、当薬局は開設20周年を迎えました。もうそんな時間が流れたのか、信じられないほど、あっという間のこの20年でした。
ドイツで1番古い薬局は、1241年の開設以来、現在も営業を続ける、トリーア(Trier)市のレーヴェン薬局(Löwen-Apotheke、訳すとライオン薬局)です。776歳の薬局と比べたら、たった20歳の当薬局なんて「ひよっこ」でもないのだなぁと、ドイツ薬局の歴史の長さに思いを巡らせます。
嬉しいことに、開局以来ずっと、うちを利用してくださる方々もいらっしゃいます。開局当時、小さかったお子さんたちが、お父さん・お母さんとなり、ベビーカーを押していらっしゃると、「うわぁー、時間が経つのは速い!」と、思わずにはいられません。義母の育児・家事応援や、同じく薬剤師である主人の理解もあり、家族共に大病もせず、これまで、なんとか仕事を続けることができたことを本当に有難いと思います。

当店を「いきつけ薬局」として、ごひいきにしてくださる患者さん、顧客の方々に、何か記念になるものをと思い、注文したのが、ロゴ入りのVesperbrettと呼ばれている小さなまな板です。

Vesperbrett

ドイツの習慣では、昼には、調理した温かいものを、夜は火を通さないものを食べます。バターやクリームチーズを塗ったパンにハムやチーズをのせ、ハーブや野菜を刻んだものを添えていただきます。その時に、特に南ドイツでお皿代わりに使うのがVesperbrettです。

お皿代わりのVesperbrett

お皿代わりのVesperbrett

ドイツ語でVesperには、1.「夕べの祈り」と、2.「夕方の間食、おやつ」という意味があります。Brettは「板」です。

その昔、キリスト教徒は、夕べのお祈りの後に軽い食事をとっていたことから、2番目のような言葉の意味が派生したそうです。
ドイツでは、薬局でお渡しできる販促物や粗品を専門に扱う会社があり、薬局へは各会社から注文カタログが郵送されてきます。薬局で粗品として配ってよい品物の価格には、法規により、やわりとした上限があります。そのカタログの中で、今までに見なかったものがVesperbrettでした。若い人たちの間でも、少しずつ、また人気が出始めているのだとか。壊れにくいし長持ちするので、宣伝用にはいいかもしれないと、お配りしたところ、粗品ながら、なかなか好評です。
秋から大学へ入学し、下宿生活を始めるお子さんの台所用品に、このサイズのまな板がちょうどいいとか、お孫さんの粘土板・工作台として便利だとか、久しぶりにVesperbrettで夕食を取りました...などなど、フィードバックが沢山です。エコ意識の高いドイツのためか、材料として使用されている木材の名前を聞く方も多く、「知りません」だけの答では、済まされないドイツ薬局の常、販売会社に問い合わせたところ、パラゴムノキということでした。ゴム原料用に樹液を採取した後、材木として木製品・家具製造に2次利用されるのだそうです。さらに、「当社のVesperbrettには、エコロジーを配慮したプランテーションから調達した材木のみを使用しております。」とのコメント付。さすがエコ大国、ドイツだと思いました。

お渡しすると「これからも最低20年、薬局でお仕事を続けてくださいね。」と、励ましのお声をかけてくださる方もいます。厳しくなる薬事関係法規、保険医療政策、インターネット販売や人工知能など、薬局を取り巻く経営環境が、どんどん変わる中、当局が今後20年も残り続けられる保証はありません。85歳までは現役で頑張りたいと、望んではいるものの、齢を重ねながら仕事を続けるのは、体力的にも精神的にも、なかなかしんどそうです。しかし、1つ努力だけはしてみたい。いきつけ薬局に欠かせない、人とのつながりの大切さを忘れない薬局でありたいと思っています。巻き込み巻き込まれて、いきつけ薬局の必要性を伝えていきたいと思います。

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