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ドイツPTA便り-3

ドイツPTA便り
3
著者
アリーン・フォーゲル
● ドイツPTA便り-3
ドイツにおける医薬品の調製<カプセル充填>

 

2015.06.30

 

PTAの業務は広範囲にわたります。医薬品の調合・調製もPTAが行う重要な仕事です。

今回はその1つである粉薬のカプセル充填をご紹介します。

 

薬局では医師の処方箋に基づき、様々な剤形の医薬品を調製します。カプセル充填も行い

ます。見本の処方箋をご覧ください(処方箋の画像1)。小児にメトプロロールのカプセルが処方されています。含有成分量は1カプセルあたり8mgです。現在、ドイツには小児用のメトプロロール完成製剤がありません。当薬局へは、このような小児用の処方箋が定期的に来るので、そのつど調製します。

 

まず、作業台と調製に必要な器具を消毒します。カプセル充填には、専用の充填器具、

メスシリンダー、乳鉢・乳棒、プラスティック製のカードを使用します(写真1)。空のゼラチンカプセルを充填器具にセットしておきます(写真2)。ドイツで一番低い用量のメトプロロール錠は50mg錠です。8mg含有カプセル、100個を調製するため、50mg錠16個を乳鉢で細かく砕きます。この患者さんには、賦形剤に乳糖を使いました。使用した錠剤と賦形剤の量はだいたい1:1ぐらいになります。必要な全容量を量るため、粉砕した錠剤をメスシリンダーへ入れます。カプセルサイズ番号1で0.5mL/個なので100個用に50mLの目盛りまで賦形剤を加えます。メスシリンダーの中身を乳鉢に戻し、プラスチックカードで粉末を随時、縁から乳鉢の中心にかき集めながら、乳棒で撹拌します。粉末をメスシリンダーに再び入れ、現在量を確認し、必要であれば全必要容量まで賦形剤を加えます。加えた際は、全粉末を乳鉢で再撹拌し、成分が均等に分散するようにします(写真3)。混合した粉末は、カプセルの半分側をセットしたカプセル充填台に載せ(写真4)、プラスチックカードを使ってならし、混合粉末が残らず均等にカプセル内へ入るようにします(写真5)。その上に別の半分側カプセルがセットされたプレートを載せて押すとカプセルが閉まります(写真6)。遮光性の容器に入れ(写真7)、ラベルを貼ります。患者さんは小児なのでカプセルは飲めません。ここで使用するカプセルは、中身の粉末を保護し、持ち運びの便宜を図る「容器」(写真8)として使用しています。

 

薬局内での医薬品調合・調製には、作業記録を残すことが義務付けられています。

 

これまでに調製したことのない成分の組み合わせの場合は、成分濃度の適正や成分と基剤の相性などをチェックします。処方内容に問題があれば、医師に疑義照会し、他の可能性を提案します。ドイツには薬剤師組合と薬剤師協会が各連邦州にあり、それらが国のレベルで統合したのがドイツ薬剤師連盟ABDAです。このABDAの傘下に諮問機関であるArzneimittelkomission der Deutschen Apothekerがあり、調剤研究部門を持っています。

調合・調製に関し、薬局で解決できない問題や質問がある場合は、この機関に問い合わせます。

 

薬局で使用するコンピュータには、調合・調製した医薬品の保険請求薬価を計算できるよう、専用のプログラムが入っています。原料、量、容器、調剤報酬(剤形や調製量により違います)を入力するだけで、簡単に保険請求薬価が計算できます。処方箋へは薬価だけでなく、薬価計算明細(処方箋中ほど)もプリントアウトします。このプログラムはラベル用プリンターと連動で、患者さんの名前、用法・用量等を入力すると容器に貼るラベルもプリントできます。

 

作業に集中できるよう、静かな落ち着いた時間が必要ですが、PTAの多くは調合・調製を喜んで楽しく行っています。

 

今回も、PTA便りをお読みくださってありがとうございました。次回もお楽しみに

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