OTC医薬品の取り扱いとセルフメディケーション減税への対応
今年もあと2ヶ月ほどで終わりです。皆さんの薬局では2017年1月から始まるセルフメディケーション減税への準備が必要です。
2016年は皆さんにとってどの様な年でしたか?調剤報酬改定、かかりつけ薬剤師の施設基準の届出、健康サポート薬局の届出など、慌ただしかったですね。私も忙しくてメールマガジンの原稿が書けていませんでした。やっと10月のドイツ薬学視察旅行も終わり、アポビッテかわら版8号(近日中にお手元に届きます)の原稿やホームページの諸々の報告を書き上げ、この原稿が書けるようになりました。
2016年10月には健康サポート薬局の届出が始まりました。JACP会員の薬局も届出や届出準備が進んでいるようです。届出受理済みのお知らせが来たら、順次皆様にご紹介していきます。この数年間、準備しそして実践して来た薬局は、ちょっとしたハードルを超えるだけで届出ができています。いつも研修会でお話ししていますが、先を見て早めに準備することがとても大切です。
2017年に進めるべきことはOTC医薬品の取り扱いと思います。長年のドイツ薬局視察を通じて、日本の薬局でのOTC医薬品の取り扱い(準備)と薬剤師や登録販売者のOTC医薬品相談販売の技能修得が必要と感じています。9月にカナダ・アルバータ州立大学のRossTsuyuki教授を招いたCP学術講演会で、カナダの薬剤師の役割変遷、特に軽医療への対応の話を聞き、なおそう確信します。そう言えばなのですが、私の会社であるネオフィスト研究所のOTC医薬品相談販売プロトコールのお手本はカナダの「Patient Self-Care〜Helping Patients make therapeutic choice」 という教科書です。地域住民がセルフメディケーションに取り組むには、薬局でトリアージを行い医療機関への受診を勧めたり、どのOTC医薬品をチョイスしたらいいのかの手助けが必要です。10年前からカナダの教科書をお手本にし研修や通信教育に活用していますが、カナダではそのような教育の変遷があり現在の処方権も持つ薬剤師が輩出されて行ったのでしょう。10年経ってやっと日本でもセルフメディケーションの機が来たように感じます。
2017年1月よりセルフメディケーション減税(医療費控除の特例)が始まります。適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29 年1月1 日~平成33 年12 月31 日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定成分を含んだOTC 医薬品(いわゆるスイッチOTC 医薬品)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払った対価額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(上限:8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除する新税制です。
ポイント1「適切な健康管理の下で」
健康に留意している人、つまり、健康の維持増進や疾病予防のために、特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診受けている人が対象です。健康サポート薬局の健康サポート機能には、「定期検診その他必要な健診を受診していないことが判明した場合受診勧奨すること」と盛り込まれています。
ポイント2「いわゆるスイッチOTC 医薬品」
要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品。2016年3月31日現在のスイッチOTC医薬品有効成分は82成分で、成分リストや2016年10月時点の対象品目一覧は、厚生労働省のホームページにアップされています。ロキソプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、花粉症の薬、水虫の薬などがあげられています。購入の際に参考になるように対象製品パッケージに表示する共通識別マークが決まっています。
ポイント3「証明書類の記載事項」
対象医薬品を取り扱う店舗では、本税制の適用に係る証明書類であるレシート等について、購入品目が本税制対象品目であることがわかるようにする必要があります。証明書類には、①商品名、②金額、③当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨、④販売店名、⑤購入日が明記されていることが必要です。キャッシュレジスターが発行するレシートで対応する場合は、商品名の前にマーク(例えば「★」)を付すとともに、当該マークが付いている商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨(例えば「★印はセルフメディケーション税制対象商品」)をレシートに記載するか、対象商品のみの合計額を分けて記載するか必要です。①~⑤の事項が明記されているのであれば、キャッシュレジスターが発行するレシートであるか、手書きの領収書であるか等を問いません。薬局では手書きにするのか、レジでの対応にするのか準備が必要です。
ポイント4「セルフメディケーション税制のアナウンス」
患者さんや地域住民に1月よりスイッチOTC減税が始まることへのアナウンスを行い、領収書類を保存しておいてくださいなど情報提供していきましょう。
また、当薬局で購入された場合、年末に領収書を発行致しますなどのアナウンスもいいですね、そのためには顧客ごとの管理が必要になります。POSレジの導入も今後の薬局の課題です。2016年3月アッセンハイマー慶子氏のメールマガジン「ドイツ薬局だより9」で、顧客カードのことが紹介されています(バックナンバーも見られますので参照してください)。ドイツでは顧客カードがあればレシートをいちいち収集する必要がなく、いつでも薬局で処方箋の自己負担費や医薬品購入費のリストを作ってプリントアウトしてもらえます。このようなサービスが「いきつけ薬局」の特典であったりします。
顧客カードまではなかなかという場合は、お薬手帳を活用してください。お薬手帳に対象OTC医薬品を購入された場合、購入日、品名、数量、金額を記入し、薬局印または薬剤師印を押印しておくと、年間の領収書を出すこともできます。JACP版お薬手帳には、OTC医薬品の記録欄もあります。会員の皆様の薬局で、JACP版お薬手帳を活用していただけると、とてもありがたいです。
薬局がOTC医薬品の販売になかなか腰が上がらない理由として、流通の面(卸してくれない)、置いても売れない、価格ではドラッグストアに太刀打ち出来ない、売り方がわからないなどの声が聞かれます。長年薬局業界にいますが、医薬分業の黎明期もそうでした。来るかどうかわからない患者のために医療用医薬品を在庫するのはお金がかかるという意見が多かったです。ただ、薬がないと処方箋もOTC医薬品を必要とする人も来ません。今は機が熟しつつあります。近い将来の投資と思い、OTC医薬品の準備とOTC医薬品相談販売の知識と技術を身につけてほしいと思います。
スイッチOTC類似薬の保険償還率の引き下げや薬価はずしの議論も始まっています。2018年の調剤報酬改定前に一定の結論が出ると思います。未来固めをしてきましょう。