ベンゾジアゼピン系薬剤の長期処方に対する減算と向精神薬調整連携加算
来年の4月1日より、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期処方(12ヶ月以上)に対する減算が始まります。これは2018年度の診療報酬で新設されたのですが、減算が始まるのは2019年4月1日からです。今年度ベンゾジアゼピン系薬剤を同じ用法用量で処方されている方が対象となります。
薬局の調剤報酬には直接関係のない点数なのですが、医療機関と連携という意味で、医療機関にベンゾジアゼピンの系の薬剤を長期処方されている方の情報をお伝えしてはいかがでしょうか。あるいは薬局にはすでに医療機関から減量されている処方箋が来ているかもしれません。1/4錠や1/8錠の処方もあるようです。
処方箋料:40点(新設)←68点
【算定要件】
不安の症状または不眠の症状に対し、ベンゾジアゼピン系の薬剤を12月以上、連続して同一の用法・用量で処方されている場合
ただし、当該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合または精神科医から抗不安薬等の処方について助言を得ている場合等特に規定する場合を除く
定期処方と頓服間の変更については、同一の1日あたりの用量には該当しない。
向精神薬長期処方に係る処方期間の算出は平成30年4月1日以降に行う処方から。点数の減算は最短平成31年4月1日以降
2017年3月に「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」というのが発出されました。ベンゾジアゼピン受容体作動薬には、承認用量の範囲内でも長期間服用するうちに身体依存が形成されることで、減量や中止時に様々な離脱症状が現れる特徴があることから、使用する場合は下記を注意してくださいという内容です。
・漫然とした継続投与による長期連用を避ける
・用量を遵守し、類似薬の重複処方がないことを確認する
・投与中止時は、漸減、隔日投与等にて慎重に減薬・中止を行う。
例えば、皆さんの薬局で精神科や心療内科以外で、眠剤の処方がないでしょうか。内科、整形外科、耳鼻科、眼科など。それも漫然と服用しているなど。日本はベンゾジアゼピン系の薬剤の使用量が先進諸国の中で最も多い国です。
べンゾジアゼピン系の薬剤が処方される理由ですが、
・広い対象疾患
不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害・筋緊張 (神経症、うつ病、心身症、頸椎症、腰痛症、 筋収縮性頭痛)
• 安易な処方
マイナートランキライザーという名称
迅速に得られる安心感や睡眠(効果)
自覚されにくい有害作用(口渇や便秘、不快感、依 存性 など)
一般診療科での処方
などがあげられます。
今回の診療報酬の減算ですが、当該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合または精神科医から抗不安薬等の処方について助言を得ている場合等特に規定する場合を除くとなっています。
十分な経験を有する医師とは
ア 不安又は不眠の係る適切な研修を終了した医師であること
イ 精神科薬物療法に係る適切な研修をした医師であること
<不安又は不眠に係る適切な研修とは>
日本医師会の生涯教育制度における研修カリキュラムコード69「不安」又は20「不眠」を満たす研修であって、2単位以上取得
<精神科薬物療法にかかる適切な研修とは>
日本精神神経学会又は日本精神科病院協会が主催する精神科薬物療法に関する研修をいう。ただし、精神科の臨床経験5年以上を有する状態で受講した場合のみ該当する
ベンゾジアゼピン系薬剤を減らすのには時間がかかりますので、今年度の終わりまであと4ヶ月くらいです。長期に同一用法用量で処方されている方がいたら、早めにドクターにお知らせしましょう。
もう一つ診療報酬に関することですが、
ベンゾジアゼピン系薬剤の調整連携加算
処方箋料の加算「向精神薬調整連携加算」12点
直近の処方時に、向精神薬の多剤処方の状態にあった患者又は不安の症状又は不眠の症状に対し、ベンゾジアゼピン系の薬剤を12月以上連続して同一の用法
・用量で処方されていた患者であって、減薬の上、薬剤師に症状の変化等の確認を指示した場合
指示にあたっては、「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」
を参考に特に留意すべき症状等について具体的に指示すること
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」
http://www.jssr.jp/data/pdf/suiminyaku-guideline.pdf#search=%27睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン%27
処方箋料の減算と引き換えに、加算も新設されました。薬剤師に症状の変化等の確認をした場合は加算となります。
これに対しては薬局の薬剤師が情報提供すると、医師の指示がある場合ですので、服薬情報提供料1 30点の算定が可能です。
医療機関の医師と薬局薬剤師、そして患者がWIN WIN WINの関係になるよう、減薬対応に努めていきましょう。